ギリシャはキプロスのデジャヴなのか

June 29, 2015

Photo: GR2014eu


 ギリシャは金融支援の条件として求められている財政緊縮策の合意案についての賛否を問う国民投票を7月5日に実施する。しかし期限の6月30日のIMFへの返済はできず、デフォルト(債務不履行)は確実となった。


 そのためギリシャ国民による預金や資金流出に歯止めがかからず、27日には現金引き出し制限などの資本規制の導入が始り、29日から銀行は休業することになった。



始まる預金封鎖

 ギリシャの債務問題で預金流出は2014年から始まっている。2014年の10月から 2015 年の4月までの間に300億ユーロの預金流出があたった。5月からギリシャとトロイカ*との交渉が困難をみせ、6月にはデフォルトやユーロ圏離脱の危機が高まると、ギリシャの銀行から多額な預金流出が起きた。


 6月13日からの一週間で45億ユーロの預金が流出した。ギリシャ各地で預金を引き出す行列ができ、27日にはギリシャにあるATMのうち1/3は現金がなくなるといった状態にまで発展した。



*トロイカとは財政再建を支援・監視している3組織の欧州連合 (EU)、国際通過基金 (IMF)、欧州中央銀行 (ECB)を指す


 預金引き出しの制限も実施された。ギリシャの4大銀行である、ギリシャ・ナショナル銀行、ピレウス銀行、アルファ銀行、ユーロバンクを含む金融機関で現金引き出しの制限が設定された。金融機関によってはその上限制限は異なるが、ATMで1日当たり引き出せる現金は600から 700ユーロであった。

 

 ギリシャ外務省もギリシャ訪問の予定がある観光客には、銀行の困難が予定されているため、滞在中に必要な現金は入国前に準備するように指示している。




銀行業務停止、アテネ株式取引所の閉鎖

 欧州中央銀行(European Central Bank: ECB)は「銀行取りつけへの備え」として、ギリシャの金融機関向け緊急流動性支援(Emergency Liquidity Assistance: ELA)を行ってきた。しかしECBの緊急理事会でギリシャの銀行に対する資金供給を増やさないと事を決めたことから、銀行の流動性は低下している。


 これまでギリシャの金融機関はこの支援で流動性を保ってきた。6月中旬に890億ユーロであった支援は預金流出の加速により1,290億ユーロにまで拡大した。この額はギリシャの金融機関の総預金残高の約1,200億ユーロを超えるものとなった。したがって、全ての預金を使っても、支援資金の返済はできない状況である。



Photo: Debating Europe

 

 パルファキス財務大臣は28日、金融機関の業務停止や預金封鎖が29日月曜日から国民投票後の7月7日まで実施されると発表している。その後、銀行業務が再開しても、預金引き出しは1日60ユーロに限定されることになる。金融機関の業務停止による混乱でアテネの証券取引所も29日から休場となる。

 

 

 IMF への返済をデフォルトすることより、ギリシャの銀行に流動性がなくなり、銀行の破綻連鎖が起きる危機的状況を避けなければならない。そのためには、資本規制は不可欠な手段である。だが、ECBの追加支援がなければ、銀行破綻は避けられない状況となり、ギリシャ経済の崩壊は時間の問題となる。

 

 

国民投票

 国民投票を控えて、世論が二分化している。右翼派のProto Thema新聞は、57%はトロイカの財政緊縮策を受け入れるべきと、ユーロ離脱に反対。左翼派のTo Vima新聞も47%がEU側の再建策を支持していると報道、1Avgi新聞によると、国民の62%は以前の通貨(ギリシャドラクマ)に戻る方が経済状況を悪くする、22%は経済が良くなる、16%は分からないと答えた。

 


 

 7 月5日の投票は財政緊縮策の合意案についての賛否を問うだけでなく、ユーロからの離脱に賛否を問う投票でもある。前者について賛成多数であれば、6月30日にデフォルトしても、債務団との新たな金融支援の交渉の再開の道は残されている。しかし反対多数であれば、ギリシャの金融機関の破綻と政治混乱による政権交代は確実である。