預金の一部が消える日

Aug. 25, 2014

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2008年のリーマン・ブラザーズ破綻による、金融機関の破綻危機から「大きすぎてつぶせない」銀行を救済するのに、各国は公的資金(ベイルアウト)を用いた。それから5年、銀行が今後破綻した場合に債権者を関与させる対策として「ベイルイン」と呼ばれる方法が初めて2013年にキプロスで実施された。キプロスの成功は1つのモデルケースとなり、今後、金融機関の破綻処理の際、各国は「ベイルイン」を実施することになるであろう。

 


「ベイルイン」とは、金融機関の破綻危機の際、公的資金を使わないで、株主責任に加えて、債券保有者、預金保険対象外の預金者にも、銀行再編のコストを負担させる方法である。既に「ベイルイン」はEU, アメリカ、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアとG−20参加国の間では、金融破綻処理の方法の1つとして規定されている。

 

 日本でも、今年6月に預金保険法が改正され、「ベイルイン」の概念を取り入れることになった。ただし、日本の場合は公的資金注入による「ベイルアウト」が前提として残っており、今のところ「ベイルイン」対象となるのが、劣後債、優先株式劣後ローンの3種類で、今のところ預金と債券などは対象外となっている。 

 ベイルインの対象となる預金は国によって異なる。EU諸国は全額保証対象の10万ユーロ以上の預金へと、統一する方向に動いている。しかし、ニュージーランドのように預金全額保証制度がない国は、一律に銀行預金の一部が金融機関の救済に使われることになる。


 
キプロス
 2013年3月15日の金曜日にキプロスの国民はいつものように平穏な一日を過ごしていた。しかし一夜で状況が急転した。キプロスの銀行が破綻、そうして、政府は財政上公的資金での救済が出来なことから、銀行は無期限の休業となり、預金口座は凍結、引き出し限度額を一日100ユーロに設定するなど厳しい資本規制がひかれた。全額保証されている10万ユーロ超の預金に対して47.5%が銀行救済の一部として使われた。「ベイルイン」から1年後、ようやく資本規制が解除となった。

 預金者はお金を銀行に預ける行為は、自分の資産を安全な場所に保管することと考えている。しかし銀行にとっては預金者からお金を"借りている"ということなのだ。銀行口座に入金された瞬間、お金の所有者は銀行となり、預金者は債権者となり、銀行から預金額を支払うことを約束した借用書(預金通帳)をもつことになる。

 

 そのために、銀行は借り入れ料として利息を支払うのだ。いつでも、預けたお金を全額引き出すことが可能な時代は終わり、預金者はリスクと負担を背負う時代となったのである。