TPPの行方に逆風

June14, 2015

Photo: Freedom Outpost 


 環太平洋経済連携協定(Trans-Pacific Partnership : TPP)締結に不可欠とされるのが米大統領貿易促進権限(Trade Promotion Authority : TPA)別名ファスト・トラック法案と関連法案である貿易調整支援 (Trade Adjustment Assistance : TAA) 法案の両可決である。この2つの法案を巡り、12日に下院で採決があった。


 TPAは通商交渉の権限を大統領に委ねる法案である。成立された通商協定は議会で容認が求められる。交渉一任法のため、通商協定の内容に関する議論や修正は議会で一切できないことになっている。つまり、議会は大統領が提出した通商協定案を賛成か反対かの採決を行うことに限る。


 アメリカはこれまで数々の自由貿易協定をTPAで成立してきた。しかし、今回過去の貿易協定と大きく異なる点は、TPP通商協定の採決の際に内容が公表されず、各議員がTPPの中身を読むことが禁じられていることである。


 つまり、現在下院予算委員会の委員長を務めるポール・ライアン(共和党、ウィスコンシン州)が述べるように「TPP法案を可決しなければ、法案の中身を知ることができない」といった、前代未聞の議委員にも公表されない通商協定であること。



 

Photo: Washington Journalism

 

 TAAは輸入拡大の煽りを受け失業を余儀なくされた被雇用者に給付金が支払われる支援プログラムである。民主党はTPPに反対の労働組合をはじめとする反対派を取り込んでTAAの否決に回った。

 

 オバマ大統領の支持者でもある民主党の下院議長のナンシー・ペロシ(民主党、メリーランド州)もTAAの否決に回った。ペロシ議員はTPAには賛成したが、TPPが非公開のため、時間を掛けて検討するべきとの意見で反対したとみられる。

 

 自由貿易に否定的な立場の民主党に加え、「反オバマ」の共和党、両党の中でTPPが国民や議会に非公開であることに不満を持つ議員などが反対の立場をとった。


 

 結果はTPA法に対して、219対211の賛成多数で可決された。だが、TAA法は126 対 302の反対多数で否決されたのである。TPPを進めるには両法案の可決が必要であるため、共和党は18日に再投票を目指すとしている。

 

 再投票までの期間にオバマ大統領やTPPを推進する米大企業は、共和党議員の支持を求めて激しい説得に動くとみられる。しかし法案の審議を巡ってTPP法案の不透明性が明らかになり、国民の不満と不支持が高まり、再投票の行方は予測ができない。