マレーシア航空、アシアナ航空の事故と墜落事故が続く中で台湾のトランスアジア航空235便の墜落事故は衝撃的な墜落直前の映像とともに情報が世界を駆け巡った。事故機はATR72というターボプロップ双発機で離陸直後のエンジントラブルで高度が確保できずに失速状態に陥った。現在も救助作業が続いているがこれまでに乗客53名、乗員5名のうち、生存者15名、行方不明者5名、38名の死亡が確認された。
ATR72という機体
高層アパートが建ち並ぶ住宅地を避けて蛇行する川へ不時着を試みた機長に賞賛の声があがる一方で、事故の直接原因とされる正常なエンジンを故意にシャットダウンしたことの理由が不明で憶測を呼んでいる。何故ならマレーシア航空の2つの墜落、アシアナ航空機墜落事故に続いてアジアの航空機事故が多発していることと、トランスアジア航空は235便の前にも同じ機種で2014年7月に222便が着陸に失敗して乗客54名、乗員4名のうち49名の犠牲者を出しているからである。
222便の機体ATR72-500は製造から14年後、エンジンはPW127Fで機長は飛行時間2万時間を越える熟練パイロットであった。事故原因は台風10号の影響で雷雨と強風の中での強行着陸時にパワー不足で失速したとされている。235便はATR72-600でエンジンも同じであるが機体は納機が2014年で新しい機体だが左エンジン(第一エンジン)が不良で2度交換している。ATR72の事故の中で整備ミスの代表とされるチュニインター機事故では、整備の際に燃料計の交換を燃料タンクの小さいATR42機のものを誤って取り付けたため、燃料計の指示と残量の不一致で燃料切れとなった事件がある。
235便の深まる謎
今回の事故で最大の謎はエンジン出力が下がった第2エンジン(右側)を補うため通常は出力を上げるべき第1エンジンの出力を故意に(スロットルを閉じて)停止させた後に、再起動したが間に合わず失速したことである。何故、出力を上げるべきエンジンを停止させ、また再起動したのか。経験豊富なパイロットが慌てたにせよ問題のない方のエンジンを間違えて停止することは考えにくい。
ATR72は1986年に納入が開始され2004年には300機目が生産された。39機を運用するアメリカンイーグル航空を除けば、ほぼ10機前後の運用体制で飛び抜けた販売ではないが、長寿命の旅客機である。それでも整備がきちんとなされなければ致命的なトラブルが起こる。実際235便機は、機長が前回のフライト終了時にエンジン異常を報告したが、整備士が運行遅延による罰金を恐れ、整備点検を後回しにしたため、点検修理をせずに飛び立った。明らかな人災とぴえるだろう。
経営効率の犠牲に
問題が発覚したときにそれにより被る自分の責任を逃れるために報告を怠ることで事故が起きるとしたら、やりきれない。LCCなど往復できる回数で採算が取れる航空会社では欠航便を出すことは命とりなのはわかる。しかし怠慢の結果どうなるかを予想できないはずはない。今回の事故は会社の体質に問題があるとしたら経営陣の責任は重い。ブラック度が高いエアラインにのりたくないと思う。
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