3Dプリンテイングが100倍高速に

14.01.2019

Photo: 3dprint.com

 

ミシガン大学の研究チームは、プラスチック層を1層ずつ積み重ねるのではなく、複雑な形状を従来の3次元印刷プロセスの最大100倍の速さで、大量の液体から製造する技術を開発した(de Beer et al., Science Advances 5,eaau8723, 2019)。

 

同一製品を10,000個未満しか生産しない小規模の製造業では、1万ドル以上の金型の製造はコストに直接影響する。そうした企業には金型を必要とせずに部品を作成できる新しい3Dプリンテイングのインパクトは大きい。一般的な3次元印刷の形式は、いわば1次元の線画で3次元の部品を作成するようなもので効率的ではなかった。上のgif画像はTitan-1と呼ばれる市販のUV樹脂固化を利用した高速3Dプリンター。

 

研究チームの方法は、UV固化するを制御するために2つのビームを使用して液体樹脂を固めることにより、これまでの3Dプリンテイングの手法より効率よく単一のショットで一気に樹脂を3Dパターン化できる。この3Dプリンティング技術では、凝固反応を開始するための光源とそれを停止させるための光源を独立の2光源で制御する。鍵となるのは、酸素を樹脂に浸透させ化を停止させ、新たに印刷された表面を引き離す特殊な流体の膜を残するプロセスである。

 

酸素雰囲気で固化を止めることで、研究チームは物体の周囲にmmスケールの隙間を作り出し、樹脂が何千倍も速く流れるようにしたところがポインントである。従来のシステムでは、光反応は1つだけで、光活性剤は、光が当たるところではいつでも樹脂を硬化させるが、研究チームのシステムでは、異なる波長の光で反応停止も制御できる。単に2D平面内の凝固を制御するのではなく、2種類の光をパターン化して樹脂を硬化させる(下図)。ステレオリソグラフイーと呼ばれるこの3Dプリンテイング技術は、その名の示すようにUV照射で固化する樹脂をUV光ビームで所定の3Dパターンに固化させる。

 

Credit: Science Advances

 

上図は2色の光開始と光抑制により、複雑な3D構造の制御原理。 (A)強度パターン印刷の手順。 (B)可変強度画像を使用すると、画素単位の調整が可能になり、印刷部分トポグラフィを制御できる。

 

フォード社は3Dプリンテイングを使用した製造プロセスで、自動車の開発を大幅にスピードアップした。特に削り出しによって時間がかかっていたプロトタイプの部品製造の高速化した。

 

フォード社は試作エンジン、トランスミッション、およびブレーキの金属部品開発するために3Dプリンテイングを広く使用しているが、現在では3Dプリンターを使って、規格外の専用ツールまでが製造されている。3Dプリンテイングの高速化で、本格的な製造工程に組み込める時代になったことでスマートファクトリ(Industry4.0)が世界中で加速することが期待される。