長期予測が可能になったエルニーニョ現象

10.12.2018

Credit: NOAA

 

エルニーニョと呼ばれる海面温度の温暖化現象とラニーニャと呼ばれる冷却現象は、世界中の気象や気候に影響を与える。韓国の浦項大学の研究チームは、大西洋の海面温度の変化から、地球の表面温度に重大な影響を与えるエルニーニョとラニーニャ現象による極端な気候変動を1年以上前に予測できることを示した(Park et al., Scientific Reports 8: 14957, 2018)。

 

エルニーニョ南方振動は、太平洋の赤道地域の貿易風や海面気温の不規則で周期的な変動である。例えば、エルニーニョ現象の影響では、太平洋では台風が多く、大西洋ではハリケーンが少なくなるが、ラニーニャ現象はその傾向を逆転させる。

 

赤道太平洋の温水のピークがエルニーニョより約8カ月先行することが分かっている。春先の熱帯北大西洋における海面温度の異常降下は、太平洋のエルニーニョ現象に比べて約9カ月以内に発生する。この現象を使っての予測は1年スケールが限度と考えられていた。浦項大学の研究チームは、大西洋ウォームプールと呼ばれる大規模な温水の海面温度の異常上昇が、メキシコ湾、カリブ海、西熱帯北大西洋は約17カ月後にラニーニャ現象を引き起こすと主張する。 

 

Credit: Scientific Reports

 

上図はSST(海表面温度) / HC(熱容量)とNino3.4インデックスとの関係。 D(1)のNiño3.4指数に基づく(a)SSTおよび(b)HC異常の相関マップは17ヶ月の遅延を示している。 WHWP(西半球ウオームプール)領域は、(a)の黒い四角で示されている。

 

研究チームは観測データ(1985-2016年)とモデルシミュレーション(1970-2000年)のデータを分析し、夏から秋にかけての大西洋の海面温度の異常な上昇が北太平洋の北風をつくりだし、冬と春に亜熱帯北東太平洋で、海面温度が低下する。このため大西洋ウォームプールの海面水温の低下で、最終的にエルニーニョ現象を引き起こす。これらが大西洋の海面温度の最初の変化から17カ月後に起きるとしている。

 

太平洋の大西洋ウォームプールとエルニーニョ南部振動の関係で予測された極端な気象や気候の影響が2018-2019年にかけてどうなるか興味のあるところだが、世界気象機関(WMO)によると、今後数ヶ月以内に本格的なエルニーニョ現象が始まる可能性は75-80%となる。

 

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、平均気温が1.5度Cを超えて上昇しないようにする要望を10月に各国政府に送ったが、米国とロシアを含む受け入れを拒否した4カ国によって、交渉の進展は期待できない事態となった。地球温暖化を理由に排出ガス規制を炭素税に置き換えて、先進国から後進国に富を移動しようとする国連の思惑も暗礁に乗り上げる中で、エルニーニョ現象が従来の予測限界の1年を超えて予測が可能になった。