光合成の効率化で農作物の収穫量を倍増

04.01.2019

Credit: Science 

 

植物は光合成によって太陽光をエネルギーに変換する。しかし、地球上のほとんどの作物は非効率な光合成を補うために、光呼吸と呼ばれるエネルギーのかかるプロセスをつくりだしたが、これもまたエネルギー効率が低い。イリノイ大学の研究チームは、光呼吸プロセスの改良で農作物の収穫量は40パーセント生産性が高くすることができることを明らかにした(Eisenhut et al., Science 363, 32, 2019)。

 

光合成は豊富な酵素蛋白質「ルビスコ」(RuBisCO, ribulose 1,5-bisphosphate carboxylase-oxygenase)と太陽光エネルギーを使って空気中のCO2と水を植物の成長に必須な糖に変えるプロセスである(下図)。何千年もの間、ルビスコは酸素を作り出してきた。しかし分子を確実に区別することができないルビスコはCO2の代わりに約20%の酸素を誤認識して反応し、再処理が必要な植物毒性化合物をつくってしまう。この損失でエネルギー効率が20-50%低下して、作没収量もその分無駄になる。

 

Credit: plantphys.info

 

研究チームはこの光合成の光呼吸を迂回する代替経路で、作物の成長を40%向上することができるとしている。光呼吸は通常、植物細胞内の3つの区画を通る複雑な経路をたどる。研究チームは、別の経路で反応時間を大幅に短縮し、植物の成長を40%向上させることに相当するエネルギーを節約できることを見出した。 

 

 

Credit: Science

 

研究チームは、元の経路に代わる代替ルートを設計し、プロモーターと遺伝子を使って遺伝子設計で最適化した。これまでに2年間のフイールド研究で、これらの人工植物はより早く成長し、より高く成長し、そして約40パーセントより多くのバイオマスを生産した。

 

研究チームはタバコをモデル植物として、大豆、ササゲ、米、ジャガイモ、トマト、ナスの収量を増やす研究に取り組んでいる。2050年までに倍増すると予測されている人口で人類は食糧危機に直面する。現在、無駄に廃棄されている食糧の有効利用は消極的な対処だが、生産性を倍増させる技術の登場で、克服できる可能性が強まった。