Credit: science
アリゾナ州立大学の研究チームは、液体、ガラスおよび結晶状態の間の相変化をメモリとする相変化(PCM)材料が現在のフラッシュメモリよりも1000倍も速いランダムアクセスメモリ(RAM)として、安価で高速、高密度、大容量の不揮発性ストレージに有望であることを提案した(Wei et al., Science Advances 4, eaat8632, 2018 )。
このPCM材料は、1975年にオブシンスキーによって考案され、高速な相変化をどのように実現できるか、サムスン、IBM、インテルなどのハイテク企業が開発競争を繰り広げている。研究チームは半金属材料は、1:2:4の比率のGe、SbおよびTeの合金を、準弾性中性子散乱(QENS)を用いて、PCMの液体状態の微視的ダイナミクスを調べた。
このPCM材料は、熱または光パルスで数1000分の1秒の時間スケールで、ガラスから結晶または結晶からガラス(液体中間体を介して)に変化させることでビットの書き換えを行う。アモルファス相または無秩序相において、材料は高い電気抵抗を有し、「オフ」状態となり結晶相または秩序相において、その抵抗は、「オン」状態となり抵抗が1000分の1に減少する。
何10年にもわたって結晶化を遅くする努力をしてきたバルクガラスとは対照的に、ここではそれらの半金属ガラスの相転移が高速なほどメモリ応用には都合が良い。ブラウン運動を受けている粒子の拡散が単純な式:Dη= kBT /6πrH(Dは拡散係数、Tは温度、ηは粘度、rHは粒子の半径)で与えられ、Tが変化してもD / Tが一定(ストークス・アインシュタイン則)が、ガラス転移温度に近づくまで、(過冷却状態の分子液体においても)成立する。しかし液体Te などでは、融点以上での挙動がこの式を逸脱することが知られている。下は中性子散乱実験から得られたGe1Sb2Te4の拡散係数。
Credit: science advances
PCM材料となるアンチモンテルル化物(Sb2Te3)とゲルマニウムテルル化物(GeTe)を3成分系もそのような特殊な系で、金属 - 半導体遷移に対応する密度最大値は、3成分状態図で「オブシンスキーのマジックライン」と呼ばれる直線上にあり、Ge、SbおよびTeが、1:2:4の比率で混合された場合、密度の最大値とシャープな非金属遷移は融点以下にある。
この物質の液体状態の流動性は非常に高く結晶化は非常に迅速だが、転移温度以下では液体は急速に硬化し、非晶質で低伝導性の状態を室温まで保持する。結晶化した「オン」状態は安定である。熱パルスによって融点よりも高温になると瞬間的に「オン」状態になるが、熱入力がない状態の低温では半導体状態、「オフ」状態である(下図)。
Credit: researchgate
PCMはすでにDVDの記録に応用され、普及した技術である。今回の研究はレーザー記録で高速なROMとしての応用も可能であることを示唆している。低コストの大容量メモリとして実用化が期待されている。