メイ政権のEU離脱案の否決で現実味を帯びるノルウエイモデル

10.12.2018

Photo: capx.co

 

 英国のメイ政権が欧州連合(EU)と交渉の末に合意した離脱案の英下院での採決は11日に迫っている。現状では英国に不利なEU離脱条件に議会は難色を示し可決が危ぶまれている。EUとの離脱に関して合意に達することができなければ、英国はEUとの関係でいわゆる”ノルウェーモデル”を検討する可能性がある。 

 

 ノルウェーモデルとはノルウエイがリヒテンシュタインとアイスランドとともに参加する欧州自由貿易連合(EFTA)で欧州経済領域(EEA)にとどまることを意味する。すなわちEUとは関税協定で不利にならないようにしながら、ゆるい結束で距離を置くということになる。

 

 火曜日に予定されている重要な議会投票で敗れればノルウエイモデルを代案として公式に提案するアンバー・ラッド事務次官は、メイ政権が議会で敗北した場合、第2次国民投票を含め別の手段が講じられるべきだと。選択肢として浮上しているのが、EU加盟国ではなく欧州経済地域の一部であるノルウェーに似た代替案が混乱を乗り切るとして現実味を帯びることになった。

 

 EUに押し切られた離脱案は、英国の国会議員が猛反対しており、保守党議員でさえ説得しなければならない。議会で敗北すればEUとの合意が失われ、英国は厄介な「ノー・ディール」の離脱状態に突入し、メイ政権は崩壊する可能性が高い。

 

 現状のEU離脱案は明らかにEUに有利で英国には屈辱的な内容となるため、とりあえず議会投票を延期し、来週末に予定されているブリュッセルの首脳会議で、再交渉すべきだとの意見があるが、EUの関係者は、現在のEU離脱案が唯一のもの、すなわち譲歩の余地がない、と主張している。八方塞がりのメイ政権にとってノルウエイモデルは残された唯一の選択肢となる可能性が高まった。

 

 しかし関税協定で痛みのないEU離脱が許されるなら、英国の他にもノルウエイモデル目指す国がでてこないとも限らないから、EUにとっては避けたい選択肢でもある。どこまでいっても平行線をたどる場合、離脱肯定派も反対派が恐れる「ノー・ディール」しか選択肢がなくなる。

 

 

Updated 11.12.2018 8:30

議会での投票が否決される見通しが強くなったとして、メイ首相は下院議会でのEU離脱案の投票を延期した。来週末にブリュセルで開かれるEUサミットで再交渉を試みるが、EUが交渉に応じる可能性はない。その後の投票で事態が改善される見込みもない。