南カリフォルニアを襲う「パイナップル特急」

2.03.2017

Photo: LA Times

 

2016年末から米国西海岸は暴風雨が続き2017年2月に入るとハリケーン級の暴風雨が南カリフォルニアを襲った。局所的な豪雨はロッキー山脈の雪解けと重なりオーロビルダムやシャスタダムを始めとしてほぼ全てのダムが規定水位を超えた。

 

オーロビルダムは放水路の損壊もあって決壊の恐れもあった。豪雨によって河川が溢れサンノゼなど雨と縁のない南カリフォルニア一帯で洪水が起きた。

季節外れの豪雨はこれまで1997-98年度の大規模なエルニーニョ現象でも観測されている。西海岸が太平洋の暖流によって強く影響されることは確かなのだが、NASAは今回の異常気象をエルニーニョの影響とするにはエルニーニョの規模が小さいとしている。

 

 

「パイナップル特急」

原因は遠く離れたハワイ沖の湿った空気が「パイナップル特急」(Pineapple Express)と呼ばれる気流(下図)に乗って西海岸上空に運ばれてきてロッキー山脈を越えられずにカリフォルニアに降雨となり降り注いだためと考えられている。「パイナップルエクス特急」は湿った空気をパイプラインのように西海岸に運んだが、オレゴン州の上空にある冷たい空気とぶつかって、発達した低気圧を南下させた結果、カリフォルニアに暴風雨をもたらした。

 

サクラメントの住民に避難勧告が出されていたが、危険はなくなったとして避難していた1万4千人の住民は帰宅し避難所は閉鎖された。しかしサンノゼやサンデイエゴ付近の洪水で道路が冠水し、水が引かないため孤立した住宅も多く、停電や航空便発着の遅れなどで南カリフォルの経済活動は大打撃を受けたままである。

 

 

仮に今回の降雨が「パイナップル特急」によるものならば、今後も降雨が続くと考えられ、洪水とダム結界の警戒を緩めるわけにはいかない。雨には縁のないイメージとかけ離れて、暴風雨災害地域となったカイフォルニアだが、放水路の補強工事に手抜きがあったことや電力網の脆弱さが露呈した。カリフォルには民主党の地盤で反トランプ色が濃い地域だが、今回の災害でトランプ大統領の指摘するインフラの老朽化を思い知ることになった。

 

Credit: NOAA