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現在は太陽光エネルギーを蓄電して使おうとすると、太陽電池モジュールとコンデイショナー、Liイオンバッテリーの3つの要素が組み合わされる。Liイオンバッテリーを光で充電する研究開発が進んでいる。携帯電子機器を外出先で充電することが可能になることのインパクトは極めて大きい。
色素増感型太陽電池とLiイオンバッテリー技術の融合でひとつのデバイスで発電から蓄電をこなす電池が開発された。
カナダの電力会社の研究グループはLi金属を負極材料として、Liリン酸化合物を用いたLiイオンバッテリーに色素増感で増強された正孔で脱Liを行い、負極の還元反応を行う光充電Liイオンバッテリーの実証実験に成功した(Nature Commun. 14643(2017))。
色素増感型太陽電池の原理を固体素子に応用する試みは古くから行われている。研究グループはその中のひとつであるLiリン酸化合物(LiFePO4)ナノ結晶を色素N719及び LiPF6炭酸塩電解質(セパレータ)と組み合わせた光充電Liイオンバッテリーを開発した。増感色素でつくられた正孔・電子ペアの正孔は正極のLiFePO4の脱Li反応に使われ、電子は負極のLi炭酸塩形成に用いられる。
Credit: Nature Communications
上の図は光充電Liイオンバッッテリーの構造を模式的に示したもの。色素膜上にLiリン酸化合物(LiFePO4)ナノ結晶膜が成長された簡単な構造である。色素の光励起でつくられた正孔はLiFePO4に取り込まれていく。数値は計算による仕事関数を表す。Liイオン生成が終了するとFePO4への電荷移動は起きないので反応は終わる。光照射下での照射で30時間後に電圧は3.75Vであった。インセットはソーラーシミュレータの結果である。
現時点でのLiリン酸化合物ナノ結晶バッテリーのエネルギー変換効率は1%以下である。電極材料と電解質、色素材料の最適化が必要だが、今回の研究結果は実用化に向けた第一歩となる。
この仕事の研究グループは北米の電力会社の中でR&D規模が最大となるカナダの電力会社Hydro Quebecの中央研究所IREQを中心としている。Hydro Quebecは年間1億ドル(約113億円)を研究開発に投じている。すでに電力会社は再生可能エネルギーと競争関係にない。研究開発によってその有効な利用でクリーンなエネルギー産業に生まれ変わろうとしている。