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英国とチェコの国際共同研究チームはこれまでの最大のレーザー出力を10倍高出力となる世界最強パワーレーザーの開発に成功した。国際共同研究チームは2011年から平均出力が高出力レーザーを開発し、このほど1,000Wの世界最高出力を達成した。
英国のラザフォード研究所とチェコの研究所(HiLASE)でチェコの伝説の巨人Bivojと呼ばれる新型レーザーは高出力レーザーの壁とされてきた平均出力1,000Wを2016年12月に破り、ダイオードポンプ固体レーザー出力の世界記録を達成した。
重量が20トンに及ぶBivojの開発には48億ドル(日本円で約5,700億円)が投じられた。その技術は航空産業、自動車産業、エネルギー産業など幅広い分野で応用が期待される。
Credit: HiLASE
競合する高出力レーザーは他に、米国テキサス州のTexas Petawatt Laser や日本のLaser for Fast Ignition Experiments (LFEX)のペタワットレーザーがある。これらの施設はどちらもピーク強度に勝るが持続時間や繰り返し実験頻度が低い。核融合や非線形物理など基礎科学研究には高ピーク出力レーザーが要求され、米国と日本の研究グループが開発競争を繰り広げている。
ダイオードポンプ固体レーザーは近年目覚ましい発展を遂げたが、開発研究は主にレーザーメーカーに委ねられていた。Bivojはパルスあたり100Jのレーザー光を1kWに相当する10Hzの繰り返し周波数で1時間発振が可能である。
ピークエネルギーと繰り返し周波数で決まる平均出力を高める技術は高ピークパワーを目指す技術とは別で、今回の研究では平均出力を高める技術の開発にとくちょうがある。平均出力の高い高強度レーザーは工業的な利用価値が高い。研究チームは彼らが開発した技術を市販レーザーに反映することが可能だとしている。
Credit: HiLASE
欧州のレーザー科学の最近の勢いは特筆に値する。ドイツにはX線自由電子レーザーEuropean XFELが建設中であり、Extreme Light Infrastructure (ELI)Iは複数の世界最高出力のレーザー施設を東欧の3カ所につくり、これらを関連させて高出力レーザー科学を推進する。
最終的には第4のレーザーを含めて施設を共同研究に開放するものでX線自由電子レーザー同様に研究者に開放される。ELIは現在世界最強出力のレーザーの10倍の出力10PWのフェムト秒レーザー(注3)の実現が目標である。