パリ中東和平会議で焦点となるパレスチナ問題

15.01.2017

Photo: The Irish Times

 

フランスが主催するパリ中東和平会議には、世界72ヵ国と国際機関(EU, 国連、アラブ連盟)の代表が参加している。この会議はイスラエルとパレスチナ自治区との平和交渉に向けた政治的環境を整えることを目的としている。2016年12月23日に国連で採択された「イスラエルとパレスチナが平和かつ安全に共存する2国共存案の重要性を改めて示す」とした国連安保理決議2334号を重視し、より幅広く国際社会においてパレスチナ国家承認への動きが活発化している。

 

 

イスラエルとパレスチナの2つの独立国家

 今回のパリ中東平和会議ではイスラエルとパレスチナの国境線を1967年6月4日の第3次中東戦争前に戻し、1967年から始まった、イスラエルによるパレスチナ領地(注1)での入植活動を停止、国境線を戻すことで国連安保理決議2334号の実現を目指す。

 

(注1)カノンの地を追われ世界に四散したユダヤ人がパレスチナにイスラエルを建国し再び「約束の地」に結集することで、ユダヤ人の安全保障が成立するとするシオニズム運動を受けて国連の承認を受け、1948年5月14日にイスラエルが建国された。イスラエルとパレスチナを独立国家とする国連の勧告にイスラエルは従わずパレスチナ自治を認めていない(パレスチナ問題)。

 

 

 イスラエルが進めてきたヨルダン川西岸と東エルサレムでの入植地建設は今後違法となるだけでなく、パレスチナの統治下となる。問題となるのが、第3次中東戦の勝利でイスラエルの支配下となった、ユダヤ教で最も神聖な建物である嘆きの壁と神殿の丘がパレスチナ側に渡ることである。イスラエルが自国の領土を失うばかりか、聖地をイスラム教のパレスチナに引き渡すことを容認するとは考えにくい。実際、イスラエルのナタニエフ首相は警戒を強めており、会議が成功しないとコメントしている。

 

 

 国連安保理決議2334号は国際法上、拘束力を持つことから、イスラエルやトランプ新政権が反対しても、決議を覆すことは困難である。これまで、イスラエルを擁護してきた米国だが、ドランプ次期大統領への政権交代を前にして、オバマ政権は国連安保理事会で拒否権の執行ではなく棄権投票を選んだことで米国の対イスラエル外交政策の転換となった。

 

 

 パリ中東和平会議で参加国の合意が得られた場合、国連安保理事会でのパレスチナ国家の承認決議が成立する道筋がつくられることになる。イスラエルとパレスチナ紛争回避ではなく、新たない紛争が起きることが懸念される。

 

 イスラエルに受け入れられない領土問題の解決への動きは西欧社会で増大するイスラム勢力を反映している。トランプ次期大統領の就任式典を数日後に控えての会議開催は、中東和平に米国がイスラエルに肩入れして中東に影響を及ぼすことの無いようにとの警告ととれる。