CREDIT: Hisayoshi Nozaki & Yoko Arakaki
単細胞生物がどのようにして多細胞生物へと進化していったかということは進化の研究で最も重要な問題のひとつである。南アフリカのウィットウォータースランド大学の研究チームは4細胞からなる緑藻の一種、多細胞生物のシアワセモ (Tetrabaena socialis) の核遺伝子を解析して、多細胞化の過程を明らかにした(Featherston et al., Mol. Biol. And Evolution online Dec. 26, 2017)。
研究チームは緑藻類オオヒゲマワリ系列(volvocine lineage)に属するシアワセモは多細胞化のモデルとして、核遺伝子配列を解析して単細胞からどのようにして多細胞化するかを調べ、ユビキチンプロテアソーム経路(UPP)(注1)と呼ばれる過程が多細胞化で重要な役割を担っていることを見出した。
(注1)ユビキチン-プロテアソーム系はタンパク質分解、DNA修復、翻訳調節、シグナル伝達などさまざまな生命現象に関わるタンパク質ユビキチンの活性化から結合、プロテアソームによるタンパク質分解までをになう一連の生化学経路をさす。
Credit: Mol. Biol. And Evolution
多細胞生物(シアワセモ)の核遺伝子配列を最も近い種類の単細胞藻のものと比較した結果、ほとんどの遺伝子配列はよく似ているが、わずかな(131)遺伝子ファミリーだけが配列が異なる。それらのファミリーは細胞の発育プロセスに関わる遺伝子を持っている。多細胞化に関連する遺伝子にはUPPタンパク質が多く含まれる。
細胞周期遺伝子とUPPタンパク質の変異によって多細胞化の核遺伝子配列が決まると考えられる。この研究で対象としたのは最も簡単な系であるが、他のより複雑な多細胞生物に拡張することによって、単細胞から多細胞生物への進化プロセスの理解が加速すると期待されている。