セパレータレス水分解による海上水素製造

18.12.2017

Photo: renewableenergyst

 

2050年に人口90億人を突破する地球のエネルギー需要は人口に比例せず、倍増すると見込まれている。エネルギー需要の高い都市化が進み人口の過半数が都市部に集中するためである。運転時の温室効果ガス排出量の低い原子力は安全性と環境保全の問題が露呈して、建設が進まない。一方、再生可能エネルギーへの転換と発電量の増大はエネルギー需要を下回る。エネルギー不足の時代はすぐそこにある。

 

上図は地球表面の平均太陽エネルギー(W/m2)。全地球の1年間のエネルギー消費量と同じ太陽エネルギーが地球に降り注いでいる。手っ取り早くエネルギーを得るには太陽エネルギー利用が理にかなっている。クリーンなエネルギー源(燃料電池)の燃料である水素は、現状では天然ガス(メタン)の水蒸気改質によるものだが、製造プロセスでのエネルギー消費が大きいため燃料製造も含めると採算性が低い。

 

コロンビア・エンジニアリングの研究グループは研究グループは海上に巨大な太陽電池パネルを浮かべ海水を電解質として水分解を行うことで、大規模な純水素(99%)製造が可能であることを示した。(Davis et al., Int. J. Hydrogen Energy online Dec. 15, 2017)。鍵となるのは水素と酸素を分離回収できる電極構造である。

 

従来は酸素発生と水素発生は電解質駅がイオン交換膜で仕切られた別々の電極で行われるが、セパレーターと呼ばれる電極間の膜構造が損傷しやすく維持が高コストとなる。また海水は不純物が含まれるため膜損傷を早める。そこで研究グループは電極の一方をPt触媒コートしたメッシュ状の電極構造で、水素と酸素発生が触媒コートされた電極でのみ起こる非対称電極とし、水分解反応による水素(酸素)バブル形成プロセスを毎秒500フレームという高速度ビデオ観測を行い、条件を最適化した。

 

Credit:  Int. J. Hydrogen Energy

 

非対称電極では触媒コートした面のみが水素(酸素)を発生するためにそれぞれの電極から水素、酸素を別々に回収できる。その結果、海水を電解質液とした太陽電池システムを海に浮かべた水素製造プラントが可能になった。