欧州を目指す第二の難民の波

22.11.2017

Photo: setadc.org

 

 アフリカや中東の難民キャンプの収容能力の限界で、再び欧州に難民が殺到するリスクが高まり、国連世界食料計画(WFP)が警告をだした。難民キャンプ内の治安、生活環境の悪化、特に食料不足は2015年の最初の難民が欧州に流入した時より危機的状況にあるため、難民は食料がないキャンプを離れて、欧州諸国へと避難していくことが懸念されている。

 

 食糧不足と難民は深い関係がある。WFPの調査によると、食料を安定的に確保することがますます困難となった状況では、食料を求め国境を越え、難民として他の国へと移動していく。食料不足が1%上がる度に、人口1000人に対し難民が1.9%増加していく。食料不足が深刻化していくほど難民が増加する傾向にある。

 

WFPの警告

 世界では約1億800万人が食料危機に直面しているとWFPは報告している。アフリカに限ると2月の時点で約200万人が自国で深刻な食料不足の状態にある。ウガンダにある世界最大の難民キャンプBidi Bidi では27万人の難民が収容され、ウガンダ政府の寛大な難民政策で80万人の難民がアフイカ各地から集まっている。アフリカの大規模難民キャンプ9カ所だけで約90万人以上が収容されている。全ての難民キャンプは収容の限界を超えて、食料不足は深刻化している。

 

 アフリカの難民は主に中央アフリカ共和国、南スーダン、ソマリア、ナイジェリア、ブルンジ、イエメンなどでの長引く紛争、経済破綻、飢饉などでその数は増加する一方である。しかし深刻化する難民問題、対処の限界を超える状況にある多くの難民キャンプから欧州を目指す難民を阻止することは難しい状況にある。

 

2020年までに1500万人の「経済的難民」が欧州に

 2013~2016年の間にアフリカ全土から約50万人の難民が主に経済的逃避を理由で欧州に避難したことが報告されている。中東からの難民は減少しているなかで、今後、経済危機に直面しているナイジェリア、コンゴ共和国、スーダンやエチオピアからの難民が大きく増加していくことが予想される。実に、オーストリア軍情報局によると、2020年までに1500万人のアフリカ難民が欧州に流入すると予測され、欧州はこれまで以上の難民問題の対応に追われることになる。難民問題はEU求心力に深刻な影響を及ぼしている。EUの理念は、毎日を生きることに必死の難民には遠い世界の話である。

 

 

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