検討が進む対北朝鮮軍事作戦「ブラディ・ノーズ」

10.01.2018

Photo: af.mil

 

 韓国と北朝鮮は9日に南北閣僚級会談を開始したが、北朝鮮は非核化に関する協議には応じない姿勢を見せた。核開発を巡る米朝の対立は今後も続くと見られるなか、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、トランプ政権が「ブラディ・ノーズ」(bloody nose)と名付けた軍事作戦が決行できるかの検討を行っていることを報じた。

 

 これは北朝鮮との全面戦争を避けながら、軍事施設を限定的に攻撃する作戦で、米軍は大陸弾道ミサイル(ICBM)のランチャーやミサイルを保管している武器倉庫などを攻撃、破壊する狙いである。核実験やミサイル実験を続ければ、米軍はあらゆる軍事攻撃を辞さないことを示し、米朝交渉に応じるよう圧力を掛けるというものである。

 

 トランプ政権内ではマティス国防長官とティラーソン国務長官は外交的解決法を推進する立場、マクマスター国家安全保証問題担当大統領補佐官は軍事オプションを検討する必要性をあげ、両者の対立が激化している。

 

 実はこの「ブラディ・ノーズ」作戦は以前にも検討されていた。2006年にウィリアム・ベリー元国防長官とアシュトン・カーター元国防長は当時北朝鮮が開発した「テポトン2号」が発射準備に入った際に軍事攻撃、又ニョンビョン核施設を空爆すべきで、限定的攻撃は米国の安全保障上の脅威に対する自衛行為で北朝鮮への全面攻撃ではないとした。

 

 北朝鮮は「ブラディ・ノーズ」作戦が米国が主張する限定的な攻撃ではなく、全面戦争を仕掛けたと受け止めるとしている。限定的とはいえもし米国が先制攻撃に踏み切れば、戦争勃発となるリスクが高い。国際社会で孤立を避けるため、軍事施設のみを対象としたいトランプ政権だが、北朝鮮にとっても全面戦争のリスクは避けたいところだが、思いもよらない展開になる可能性も捨てきれない。下に示したのは戦術攻撃の対象となる軍事施設の場所を示す模式図だが、実際にははるかに対象とすべき施設の数は多く、またミサイルの一部(移動式ランチャー)は位置が特定できない