LHC再実験で新素粒子の確証は得られず

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CERNLHC(世界最大の円形加速器)は201512月はヒッグス・ボソンの6倍の質量を持つ謎の素粒子を発見した。標準理論では説明できないこの新素粒子の存在は標準理論を超える新理論あるいは第5の相互作用の存在を示唆するものとして、世界的な注目を集めた。そこで20164月から実験結果を再現する試みが始まった。

 

しかし残念なことに再実験では新素粒子は発見できなかった。公式な発表はシカゴで来週開催される高エネルギー物理国際会議で行われるが、事前情報では7月までの実験では昨年の実験の再現には至らなかったという。

 

LHC13TeVという高エネルギーで陽子ビームを衝突させるハドロンコライダーで、ATLASCMSという独立した検出器を持っている。201612月の実験では両方の検出器が750GeV(質量換算)に相当する新素粒子(注1)を検出していた。(実際にはこのピークの起源が新粒子でないとする意見も専門家の間では飛交い、新素粒子発見がメデイアに取り上げられて世界中に広がった。

 

(注1)粒子が崩壊して光子に変換される時、光子(γ線)のエネルギーが粒子に対応する。750 GeVに対応する(4つの相互作用を仮定する標準理論の枠内にある)素粒子はないため、確認できれば第5の相互作用を含む標準理論の拡張が必要となる。崩壊で生じた2光子を検出する実験はγγと呼ばれる。

 

 

Credit: ATLAS

 

2016年の実験ではヒッグス・ボソンの6倍(陽子の800倍)に相当する質量を持つ新素粒子が検出された。標準理論には綻びが見え始めているとはいえ完全に覆すには至っていないが、ハンガリーの研究グループの第5の相互作用に関する実験の結果を否定するものではない。

 

素粒子の世界では3σの統計確度では新素粒子として認知されない。750 GeVに対応する質量が一つの素粒子でなく複数の素粒子である可能性を含む新理論も登場している。LHCに託された課題はまだまだ続きそうで、今後の10年も世界の先端にいることは間違いない。