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エアラインの顧客統計によるとエアラインを利用した旅行者の85%がそのエアラインを年一回以下しか利用しない。すなわち15%のいわゆるフリクエント・フライヤーと呼ばれる頻繁に利用する顧客の収益が50%に達するのである(注1)。このためエアライン各社はマイレージサービスで積算距離が一定に達すると特典を与えている。ラゲッジ重量制限の緩和、優先搭乗、ラウンジの利用やアップグレードが一般的だが中には高級車での送迎やヘリコプターで空港直行など豊富なサービス内容で顧客の確保に余念がない。
(注1)ユナイテッド、アメリカン航空の統計。
マイレージが購入代金ベースに
これまでマイレージサービスはその名の通り距離が加算されるしくみになっていて、積算距離にしたがって一般的には3クラスのカードステータスが与えられる。しかしデルタ、ユナイテッド、アメリカン航空はエアラインの合併を契機としてマイレージでなく航空券の購入代金の積算をベースにすることになった。
新システムではアメリカン航空のAAdvantageサービスでは5マイルが航空券購入代金1ドルに相当する。これまではマイレージの積算で航空券を購入することができたので、フリクエント・フライヤーはマイレージを航空券購入に当てれば購入せずにマイレージを貯めることができていた。新システムでは以前のように実際に飛行距離が長くても、購入代金を支払わなければマイレージが貯まらない。
このためフリクエント・フライヤーでもマイレージ不足でこれまでの特典がもらえない場合があるが、お金を払うことへの還元という立場でみればより公平なサービスへと変化したともいえる。お金をより払う乗客すなわち正規料金に近い値段で航空券を購入する乗客がマイルを貯めやすくなるからである。このため格安航空券でマイルを稼ぎ、マイレージを貯めてアップグレードする、という裏技が使えなくなった。乗客間の公平感を高め格差をなくす一方で、エアライン収益を上げようとする戦略である。
きめ細かいクラス差別化
次の戦略はよりきめ細かい集客法である。例えばこれまでのエコノミー、ビジネス、ファーストの3クラスにプレミアム・エコノミーやスイートといったクラスを加えて乗客の要望に応えることである。これには航空機のキャビン構成も変更しなければならないのでマーケットリサーチが重要だが、プレミアム・エコノミー席はどのエアラインでも満席で、人気の程度が推察できる。
デルタ航空はベーシック・エコノミーという座席選択権のないクラスを設け格安航空会社に対抗している。またデルタ航空はプレミアム・エコノミーよりは快適なカムフォート・プラスという準ビジネスクラス席も提供している。また上級クラスの快適性を高めた新型シートや個室のようなキャビンの改良も怠らない全方位顧客サービスで集客力を高めている。逆に言えば米国内の再編成が一段落したところでエアライン各社の競争が激しさを増して生き残りをかけた大競争時代に突入したということである。
それでもユナイテッド航空の2016第3期の売り上げ15億ドルのうち利益は9.65億ドルで、収益率64%はアップルのiphone並みである。まだまだ顧客に還元が足りないが今後の過当競争で統計がかわるかもしれない。ちなみにアメリカン、デルタ、ユナイテッドのエアライン収益ランキングは世界2,3,5位である。ちなみに権威あるSkytraxのベストエアラインランキングは以下のように3社ともベスト10圏外となった。消費者(旅行者)はもっと質の高いエアラインサービスを求めていることを3社の幹部は知らないようだ。
1. Emirates
2. Qatar Airways
3. Singapore Airlines
4. Cathay Pacific
5. ANA All Nippon Airways
6. Etihad Airways
7. Turkish Airlines
8. EVA Air
9. Qantas Airways
10. Lufthansa