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アリゾナ州立大学と中国の北京大学の研究グループがシリコンナノビーム空洞上の単原子膜を使って室温でナノレーザー発振させることに成功した(Li et al., Nature Nanotechnology online July 17, 2017)。将来的にはICチップに組み込まれて計算機間の直接的な情報通信が可能になると期待されている。
これまでナノビーム空洞の研究としては単層カーボンナノチューブから発生した光を推定効率85%以上でフォトニック結晶構造中に伝搬させた例が報告されている。これまでのナノレーザー発振は液体窒素や液体ヘリウム温度のもので、室温での発振は今回が初めてとなる。
研究グループによれば光増幅率の高い単分子膜を選ぶことがキーポイントで、室温ナノレーザー発振は2硫化モリブデン単原子層膜をICチップと相性の良いシリコンナノビームと結合して可能になったという。
レーザーは光を閉じ込める空洞と増幅媒体が要素だが、大型レーザーではこれらに適した材料を選ぶことは容易だが、ナノレーザーでは困難になる。ナノレーザーが製造できると光計算機が実用化できる。また計算機同士が直接結合することで接続速度が向上するなど応用が広い。
研究グループは2硫化モリブデンの励起子波長に対してシリコンが透明であることを利用して、導波路と空洞をシリコンで作成し2硫化モリブデン単原子層を媒体として室温で動作するナノレーザーを開発した。励起子を使うことで半導体レーザーより発光強度が強いために室温での動作(発振)が可能となった。
Credit: Yokohama National Univ.
なおほぼ同時に横浜国大の研究グループもフォトニック結晶とエアブリッジを用いた室温で動作するナノレーザーの開発に成功している(上図)。
シリコンレーザーは計算機ICと相性が良いため、望まれるがシリコンのバンド構造のために発光強度が低くInPやInGaAsが半導体レーザーの材料が主流であった。今回の研究でオンシリコンのナノレーザーを光源に用いる光エレクトロニクスの本格的な発展が期待されている。