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米国は、世界で最も対外政策の一つとして経済・金融制裁を多く発動している国である。現在、財務省の外国資産管理室(OFAC)の管理下で発動している経済・金融制裁は19カ国を対象に全部で26件にのぼる。年々増える経済制裁は世界の超大国としてのアメリカの影響力の低下を反映しているとも言える。
ロシアへの経済制裁
7月末に、上下両院で可決、トランプ大統領が署名した、ロシア、イラン、北朝鮮への追加制裁を認める対ロシア制裁強化法案は対象国以外に中国とEU諸国も対象となる。これまでの経済制裁と比べ、今回はEU諸国(特にドイツ)との協調はなく、米国が単独で、一方的に行使する制裁である。
EUのエネルギー安全を理由にロシアとドイツを直接結ぶ天然ガスのパイプライン、ノルド・ストリーム2の建設に反対する米国は、建設、電力やガスの提供、投資に関わる欧州企業、アメリカの企業もロシア企業と同様に制裁対象となる。さらに、ロシアにおける鉄道建設や鉱業に関わる欧州企業、ロシアへの輸出や投資を行う企業も制裁の対象となる。
欧州全体が関わるエネルギー政策や今後経済成長が期待されるロシアとユーラシアの開発に参加することを制限、阻止しようとするアメリカの対外政策は欧州諸国に加え、トルコ、中国、アジア諸国にも影響を与えることになる。
増大する米経済制裁
現在、アメリカの経済制裁の対象国となっているのが、ロシア、北朝鮮、イラン、イラク、シリア、リビア、ベネズエラ、キュバ、ソマリア、コンゴ、スーダン、ベラルーシ、リベリア、中央アフリカ共和国、ジンバブエ、ウクライナ、イエメン、レバノン、南スーダンである。
米国が発動する経済制裁では、指定した国、地域、特定の個人・団体、企業が対象となり、資産凍結、米ドル建取引の禁止などの措置がとられる。経済制裁は貿易政策でもなく、封鎖措置で、外交手段の失敗を意味するものでもある。アメリカが経済制裁に頼る対外政策は超大国としての影響力の低下を反映している。また経済制裁が期待するほど成果がないのもそのためである。経済制裁の対象となる国、地域、企業や産業が増えるにつれ、これまでの基軸通貨である米ドル離れを加速することになる。
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