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ドイツ、英国とフランスは2040年までに、ディーゼルとガソリン(ICE)(注1)車の販売を禁止することを発表した。世界的に見れば欧州諸国の市場規模は小さいことから、EVへの転換が世界的な潮流を変えるほどの影響力があるとは考えにくい。しかし世界最大の自動車市場である中国がICE車の販売中止を検討しているとなれば、EV化は世界の自動車産業に影響を及ぼす。
(注2)Internal Conbastion Engine(内燃機関)
自動車大国中国
2016年の自動車販売が2,803万台で、需要は前年度比で13.7%も高かった中国自動車市場は今後も強い市場拡大が予想される。北京など大都市の排気ガスの健康被害が相次ぐ中国はこれまでにも、EVの開発促進や販売増加に補助金を積極的に出してきた。
実際、ほぼ単車のEV化(注2)はすでに完了している中国がICE車の販売を禁止すれば、中国に生産拠点を持つ外国自動車メーカーはEV車以外の自動車を生産、販売することができなくなる。中国自動車産業にとっては、競争上では優位なビジネスチャンスとなる。
(注2)大学構内や市街地では道路に駐車した単車から家庭用ACケーブルが伸びて建物内からバッテリーを充電している。
特殊な中国のEV 市場
中国EV市場で力を入れているのが中国メーカーのBYD Co. と BAICモーターである。世界第二位のLi生産国である中国はEVへのLiイオンバッテリー需要を見越して、車載用が25%となるLiイオンバッテリー製造で世界の60%のシェアを持っている。
中国製品と言えば低価格で粗悪なイメージだが、EVでは立派な先進国で大衆車から高級車までラインアップを誇る。ICE車と異なり一流のデザイナーを雇って品質の良い電気部品を使えば簡単に高級車が製造できるのがEVの世界で、例えば中国ベンチャーNextEV社が中国で売り出すNIO ep9は世界最速のEVスーパーカーである。またセダンのカテゴリーではLeEco(旧LeTV)のLeSEEはデザインでもスペックでもテスラ社のモデルSを上回る。
世界の自動車産業が中国内でICE車を生産し、大半を中国内で販売してきたがEV車のみの国内販売となれば、国産EVの牙城となり貿易黒字に貢献する。また北京を筆頭にICE車(特にデイーゼル車)の排出ガスの公害問題で政府への住民の反撥が強まる都市部の環境保全に一役買う。
HVなど低燃費・環境対応ICEの経験の無い中国の自動車メーカーにとっては外国の自動車産業の脅威がなくなる。大量生産された国産EVで中産階級が車を購入できるようにすることで、経済失速に不満を募らせる中産階級に生活水準が高くなったという生活向上意識を持たせられる。
EV化でリスクも
中国の単車がEV化されている現実を見れば、4輪車についても法令によるEV化も可能なのかも知れない。バッテリー容量の小さい単車と異なりEV化を強要すればその代償は電力需要の増大となる。世界最大の新規建設原子炉の計画がある中国だが、原子炉建設のピッチは鈍化しており計画の見直しも予定されている。急速なEV化は電力不足で足元をすくわれかねない。
また現在は主流のLiイオンバッテリーに変わる新型バッテリーや日本が主導するFCVが普及すれば、既存技術を基盤としたEV戦略に綻びが出る。なお好調な量産モデルの製造のためにネバダ州に世界最大のLiイオンバッテリー工場を建設したテスラ社だが、バッテリー工場を中国に建設する計画には利益相反が予想される。
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