コネチカットの金融中心ハートフォード市に破綻の危機

16.05.2017

Photo: chs.org

 

 ハートフォード市は人口約12万のコネチカッット州の州都であり、金融業が集結する全米で最も豊かな州の金融中心で米国の豊かさの象徴であった。人口12万だが都市圏人口すなわち通勤圏人口は120万人以上となり、全米44位のビジネス都市である。ニューヨークからボストンに向かうUS95に近いこの街が急速に銀行関係の高層ビルが建ち出したのは80年代で、コネチカット州にニューヨーク市から本部を移す企業が増えだした時代に重なる。

 

 

デトロイトの悪夢が再び

 その豊かであるはずのハートフォード市にデトロイト市のような破綻の危機が迫っている。市の行政当局は法律事務所と連邦破産法第9条の申請に関する法的提案の検討に入っている。市長のブローニン氏はコメントを控えているが法律事務所と法的措置の検討を始めたことを認めた。

 

 市にとって連邦破産法第9条の申請は予想もしないことで法的準備もしてこなかったため、特別のチームを編成して対処することになる。ハートフォード市の赤字は今年度1400万ドル、来年度は6500万ドルが見込まれる。ブローニン市長は労働組合にリストラを交渉しているが、それでも4000万ドル(日本円で約44億円)が不足する。

 

 

連邦破産法第9

 連邦破産法第9条の申請は最終決定されてはいないものの、ブローニン市長は市の資材の半分が非課税であり、税収不足が破綻にむすびつく危機となったとしている。ニューヨーク市から税金逃れで移動してきた多くの大企業を暗に批判しているかのようだ。一方、コネチカット州の財政にも20億ドルの収入不足があり市のベイルアウトは期待できない。ブローニン市長は1年前から、市の財政悪化は地方自治の枠内では処理しきれないことを訴えてきた。

 

 市議会の中には増税で収入を増やし破綻手続きを回避しようとする動きもあり、これから市の立法関係者と市議会議員らとの調整が予定されている。破綻となればコネチカット州のみならず全米に与える影響の大きさから、破綻を回避するための4000万ドルのベイルアウトをめぐり駆け引きが激しくなるとみられる。

 

 

豊かさの象徴ハートフォード

 コネチカット州ではブリッジポートが1999年に連邦破産法第9条の申請を却下された経緯があるため、法的措置に慎重にならざるを得ない。最近の事例ではデトロイト、ストックトン、サンバナデイーノ、セントラルフォールスがある。ハートフォード市がきっかけでドミノ倒し的に全米に破綻の連鎖が広がりかねない。かつての都市近代化(Urban Renewal)のモデル都市でもあったハートフォードの財政破綻のインパクトは大きい。