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再生可能エネルギー(風力、太陽光)の伸びは緩やかにはなったが、エネルギー比率を順調に伸ばしている。投資面ではスペイン、ドイツの欧州勢はピークをすぎ、世界市場を牽引するのは中国、米国、日本の順となる。しかし再生可能エネルギーは変動があるため、エネルギー貯蔵と併用しなければベース電源とならない。エネルギー貯蔵として本命とされるのは水素へのエネルギー変換と燃料電池の組み合わせだが、太陽光利用の水素発生効率がボトルネックとなっていた。
ルトガー大学の研究チームは半導体でコーティングされた星型の金ナノ粒子(下図)が、他の方法よりも4倍以上効率的に水分解で水素を生成することができることを明らかにした(Atta et al., Chem, online July 12, 2018)。これにより太陽エネルギーの貯蔵効率が向上し、再生可能エネルギーの利用促進につながると期待されている。
Credit: Chem (2018)
従来の光触媒や太陽光による電気分解では紫外光を利用するが太陽光のスペクトルの近赤外線領域のエネルギーを利用して金ナノ粒子中の電子を励起することで、金属中の励起された電子をより効率的に半導体に移動させることができルためエネルギー変換効率が増大する。
紫外光で照らされた二酸化チタンはしばしば光触媒として使用されるが、紫外光に対して非効率的である。この研究で研究チームは、可視光と赤外光を利用して金ナノ粒子の吸収で生成した電子の一部を二酸化チタンに移動させた。金ナノ粒子を二酸化チタンでコーティングし、その材料をUV、可視光、赤外光に照射し、電子が金から材料にどのように移動するかを調べた結果、従来よりも4倍以上水分解の水素を生成効率が増大することがわかった。水素は太陽エネルギーを貯蔵するために使用され、その後、夜間は燃料電池で発電できる。
これまでベース電源という呪縛に縛られて再生可能エネルギー比率の増大に踏み切れなかった日本だが、水素エネルギー貯蔵との組み合わせで呪縛を解き放ちクリーンエネルギーを享受する時代が近い。水素社会という表現には誤解が多い。多くの場合、水素の安全性や製造のエネルギー効率に批判が集まる。しかし水素の製造も輸送もすでに始まっており、製造コストも太陽エネルギー利用の水分解が普及すれば、未来を安心して託せる太陽エネルギー利用技術なのである。