新型光触媒として期待される2次元物質ヘマテン

29.07.2018

Credit: Nature Nanotechnology

 

2004年にグラフェンが単離された後、新しい2次元材料の合成の探求が世界中で開始された。それらの2次元物質はナノテクノロジーとナノエンジニアリングの開発において重要な役割を果たしている。ブラジルのカンピナス大学の研究チームは通常の鉄鉱石からヘマテンと呼ばれる2次元物質を抽出した。この材料は3原子層分の厚みで、優れた光触媒特性を有している(Balan et al., Nature Nanotechnology 13, 602, 2018)。

 

新材料は、地球上の最も一般的な鉱物の一つであるヘマタイト(鉄の主な供給源)から得られることからヘマテンと呼ばれる。ヘマタイトは炭素の二次元構造であるグラフェンとは異なり、非ファンデルワールスで3次元格子で互いに強固に保持されている。

 

基本的には天然に存在する鉱物で、高度に配向した結晶で、ファンデルワールス材料ではないため、ヘマタイトは、新規な二次元材料の前駆体であると考えている。これまで合成された二次元材料のほとんどは、ファンデルワールス固体で、規則化された原子層と大きな粒子を持つ非ファンデルワールス2次元材料は少ない。

 

新二次元物質は、有機溶媒、N、N-ジメチルホルムアミド(DMF)中のヘマタイト鉱石の液相分離により合成された。透過型電子顕微鏡検査により、わずか3層の鉄および酸素原子(単層)の厚さおよびランダムに積み重ねられた2層シートの単一シート形成が確認された。

 

ヘマテンの磁気特性はヘマタイトの磁気特性と異なる。天然ヘマタイトは反強磁性であるが、ヘマテンは一般的な磁石のように強磁性である。強磁性体では、双極子は平行であり、同じ方向に整列している。反強磁性体では、双極子は逆平行であり、反対方向に整列している。強磁性体では、原子の磁気モーメントは同じ方向を向き、反強磁性体では、隣接する原子のモーメントが交互に現れる。

 

研究者らはまた、ヘマテンの光触媒特性を分析した結果、新二次元物質による光触媒作用はヘマタイトによる光触媒作用よりも効率的であることがわかった。効率的な光触媒であるためには、太陽光の可視部分を吸収し、電荷を生成し、材料の表面に輸送して水分解反応を行わなければならない。

 

ヘマタイトは紫外から黄橙色の領域の太陽光を吸収するが、生成する電荷は非常に短く、表面に到達する前に消滅する。一方、ヘマテン光触媒は、光子が表面の数原子内で負電荷と正電荷の両方を生成するため、より効率的である。また新物質を二酸化チタンナノチューブアレイと組み合わせることで、電子供給経路が確保され、より可視光を吸収できる可能性がある。

 

さらにヘマテンは、特に水を水素と酸素に分解するための効率的な光触媒であり、スピントロニクス装置用の極薄磁性材料としても役立つ可能性がある。研究チームによれば新たな二次元材料候補となる、多くの他の酸化鉄およびその誘導体が存在するとしている。