大気中の炭素から燃料を製造する時代

09.06.2018

Photo credit: Carbon Engineering

 

最近のエネルギー科学技術の最先端は、人工光合成など地球に溢れる原材料をフリーエネルギー(太陽エネルギー)を使って、燃料を製造する方向性である。ニコラ・テスラのいうフリーエネルギーとは異なるが、太陽エネルギーも原材料となるCO2もタダで手に入る、お金のかからないエネルギー源になる点では同じである。

 

夢物語に聞こえるかしれないが、近い将来、我々が購入するガソリンは、地面から汲み上げられた化石燃料ではなく、大気中のCO2から製造されたものになる。排出されたCO2を大気から抽出して、新しい燃料に変えることで、既存車とインフラをそのままにしたカーボンニュートラル化が実現すると期待されている(Keith et al., Joule online June 07, 2018

 

ダイレクトエアキャプチャ技術では、巨大なファンが周囲の空気を取り込み圧縮して、CO2を取り出して水溶液と接触させる(溶解)。CO2が再抽出され、燃料のような貴重な化学物質を製造するための炭素源として用い、または貯蔵される。

 

直接的な空気から得る方法ではCO2のトン当たり約94232ドルのコストになる。太陽光と風力からの電力は断続的であり、大規模な太陽光や風力発電設備からこのエネルギーを得て、CO2を再生して新しい燃料に再利用することができる。CO2は貯蔵と輸送が容易で、再生可能エネルギーと相補的な関係にある。

 

何世紀もの人間活動による炭素排出は、再利用することが可能なのである。人工光合成によってCO2を還元して燃料を製造するか、水素を製造して燃料電池の燃料とする選択が可能になれば、再生可能エネルギー100%社会も夢ではなくなる。