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旧ソ連邦諸国もしくは独立国家共同体(CIS)諸国とはソ連崩壊時にソビエト社会主義共和国連邦を形成していた15カ国のうちバルト三国を除く12カ国を指す。ロシア国立研究大学高等経済学院(HSE)ビジネス傾向研究センター(CBTS)は国連工業開発機関(UNIDO)の地域プロジェクト(注1)の一環として、2004~2016年のCIS諸国における製造業の経済成長を分析した。
(注1)CIS諸国における産業統計の改善と政策関連分析のための経済成長評価
後退する経済成長が明らかに
ロシア国立研究大学高等経済学院CBTSは2004年から2016年の間にCIS諸国の製造業の経済指標を比較して、CIS諸国の産業発展を一緒に分析するだけでなく、プロジェクトでの各国の役割を評価した結果、CISすべての国における長期的な着実な成長に向けた世界的なマクロ経済の減速を示し、この地域のほとんどの経済発展が後退しているという結果が得られた。
主に石油価格の低下が石油輸出国の経済悪化につながった。石油輸入の収入赤字の影響は、ロシアの景気後退の副作用だけでなく国内市場の赤字によって緩和された。CISすべての国が10年にわたり産業市場規模の縮小と同時に貿易とサービスの付加価値を高める努力を行ったが、不安定な収入のもとでは、十分な経済成長率を維持することができず、導入できたはずの新技術の数も制限され遅れをとった。
ほとんどのCIS諸国の産業市場は伝統的にローテク製品の生産に頼っており、ハイテク製品は輸入で国内需要をほぼ満たしていた。この地域の大半の国では、労働集約的な組立プロセスが不可欠のハイテク製品を生産することが困難で国外市場の影響に脆弱な体質をつくりだした。
Credit: ロシア国立研究大学高等経済学院
10年にわたって、CISにも、ロシア、カザフスタン、ウクライナ、ベラルーシなどの堅調な工業化、高い生産と輸出の可能性、製造業の地域的影響力を持つ国々が形成された。実際、アゼルバイジャンとアルメニアは開発と工業化の面では国外に引けを取らなかったし、キルギス、モルドバ、タジキスタンは、資源に基づく技術と低技術の大規模な処理の拡大を続けた。
しかしロシア、ベラルーシ、ウクライナのみが、これらの国で働く者の18%以上が製造業であることからわかるように、高いレベルの産業雇用を達成したが、ほかのCIS諸国は製造業の雇用を生み出すことができなかった。この地域の長期的なマクロ経済発展の減速を示し、CIS諸国が産業の可能性を高めるために様々な経済成長機会を利用することができなかった。
ソビエト社会主義共和国連邦という壮大な政治経済実験が失敗に終わっただけではなく、崩壊後に周辺国の近代化の足を引っ張り成長機会を逸する結果となったのである。