Photo: NOPP
現在日本で開催中のG7で珍しく協調ムードで、国際海洋調査事業ARGOプロジェクトを支援する声明が発表された。ARGOプロジェクトとは、簡単にいうと海洋を浮上する3,500個もの自立型海洋調査プローブによる国際観測網ことである。10日に一回、調査プローブは1,000mの海中に潜水して、浮遊しながら計測し、さらに2,000mの深度に潜行してデータを測定したのちに浮上する。
このサイクルで1,000回の測定を行い大洋の全域を3,500箇所でカバーする。時間と深度ごとの測定データを整理することによって、大洋のモニタリングを行うものである。NOPP(国際大洋パートナーシッププログラム)により推進されるARGOプロジェクトはすでに深度2,000mまでの1,00万個の海洋プロファイルデータを取得している。
Source:Jasanone’s Weblog
ARGOは当初日米主導で開始されたが、現在は28カ国の研究機関が参加したグローバル海洋調査となり、3,500個のプローブは各国が分担して提供している。上の図にあるように米国と日本が最も多くのプローブを提供していることがわかる。今後、さらに深海(4,00mから6,000まで)のデータを得るためにアップグレードを検討中であるが、そのためには米国の負担を減らし各国が協調して、資金援助を行う必要がでてきた。
ARGOプロジェクトの調査結果は公開されていて誰でも利用することができる。オープンアクセスの事業をG7が援助して世界中が利用できることは異常気象の研究や海洋環境の変動の研究に役立つ。G7の共同コミュニケによれば、これまでの観測対象は水温と塩分濃度だったが、今後はCO2濃度、酸性度、クロロフイル濃度を加えることが検討される。
このためにはそれぞれのセンサーの追加が必要になるが、各国で分担することが合意された。中でも海水に溶け込んだCO2のデータはCO2削減の根拠となるもので、全てをCO2排出と海水中のCO2、樹木に光合成の結果として貯えられる炭素のバランスを詳しく調査する必要性が増している。しかし今回のG7声明の背景には米国の財政難で公海に広く配置されるプローブの負担を軽くしたい思惑があったのかもしれない。