マイナス金利に抵抗するドイツ地方銀行

07.03.2016

Image: CNBC

 

 欧州中央銀行(ECB)は310日の定例理事会で、追加緩和と中銀預金金利の現行マイナス0.3%からマイナス0.5%の一段の引き下げを決定する可能性が高い。そのマイナス金利政策に、ドイツのバイエルン銀行協会は抵抗を始めた。加盟銀行にECBに預けている余剰金を引き揚げて、現金を各銀行で保管することを進めたのである。地方銀行の存続をかけての中央銀行との対立となる。

 

 

 銀行はECBに余剰資金を預け、金利を得ていた。しかしマイナス金利政策の導入により、当座預金に手数料が課せられるようになった。マイナス金利導入は銀行の資金を企業や個人などへの貸し出しを増やす狙いであった。しかし、銀行の余剰金が必ずしも融資に回るとは限らない。

 

 

 経済の低迷により資金需要が低い(借り手が少ない)、リスクの低い融資先(貸し出す相手が少ない)が限定されているなどの状況のなか、ECBの思惑通りにはいっていない。そのため、1年半前からマイナス金利を導入しているにも関わらず、預金量に変化は見られない。つまり、ECBが想定していた経済効果がないのである。

 

 マイナス金利政策で銀行、特に地方銀行や中小規模の銀行の収益に悪影響を与えている。地方銀行の収益が低迷しているなか、マイナス金利はさらに収益の減少圧力となっている。地方銀行の自衛策として、各銀行が余剰金を現金で金庫に保管することは、次の金融危機に備える対策にもなる。

 

 

 しかし、この対応にも問題が発生する可能性がある。全ての銀行預金に匹敵する現金が存在しないからである。市中で流通している現金M0は、図で見て取れるように全体のマネーサプライのほんの一部である。銀行が中央銀行に預けている預金の現金化を要求するようになれば、市場に混乱が生じる。中央銀行は、必要とする現金の流通量を増やすか、現金の引き出しに規制を導入するか、又は現金廃止の策でしか対応できない状況に追い込まれる。そこで今、現金廃止が世界の中央銀行や金融専門家の間で議論、その導入が検討されているのである。

 

 

上の図は量的緩和を始める前のマネーサプライを示す。世界の中央銀行が一斉に始めた量的緩和によってマネーサプライはさらに20数倍にも膨れ上がっている。