世界に広がる感染症

July 25, 2014

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コンテジョン」という映画(2011年)を見た人は大変多いかと思う。香港出張から帰国した女性が謎の病気で死亡。その原因が感染して数日後に死亡する空気感染のウイルスと判明、その後、ウイルスが世界中に感染拡大していく話である。実は、今まさに、この映画と同様なことが起きているのである。

 

 7月25日にある40代のリベリア人がエボラウイルス感染の疑いで、検査を受け、エボラ感染と判明された。

 

 問題は、どこで発病したかである。場所は2100万人の人口をもつナイジェリア、世界第4の人口密集首都ラゴスの空港である。入国直後に、空港で倒れ、病院に搬送、血液サンプルはWHOでエボラ検査に出された。


 その後エボラ感染と確認され、今後男性が乗っていた飛行機の乗客と数週間前から接触があった人々の特定作業、その人々のエボラ検査と隔離が行われる。もし、乗客の中で、別の飛行機で別の国に行ったとしたら、追跡範囲が果てしなく拡大する。

 

 さらに、シエラレオネのフリータウンで、エボラ感染の女性が家族によって病院から連れ出され、逃走していることが、パニックを引き起こしている。エボラ感染に関する低い知識、不十分な医療インフラ、貧困により医療治療を受けられない、西洋医学への不信、WHOの人材不足と予算カットで十分な対応が出来ないなどが、今後パンデミックが起きる可能性を高めている。

 

 アフリカ諸国はまだ発展途上国である.医療インフラ整備は整っておらず、ウイルス感染が拡大すれば、社会、経済活動全体が機能しない非常事態になる可能性さえある。

 

 

世界で報告されている感染症

 

エボラウイルス

 西アフリカのギニア、リベリア、シエラレオネで、エボラウイルス感染が拡大を続けている。712日までに、966が感染、うち604人が死亡している。23日には、シエラレオネのエボラ専門治療センターの主任医師が感染、看護師3人を含め死亡している。WHOは警告、西アフリカの感染は、「もはや制御不能」事態としている。過去にもエボラウイルスの発生はあったが、農村地域であったため、感染は限定されていた。


 今回はここ40年で感染が最も深刻である。その訳は、都市部での感染で、感染者の特定と追跡が難しく、医療インフラが不十分な国で起きているためである。さらに、WHOの予算カットで、WHOが十分な対応が出来ないことも感染拡大につながっている。

 

MERS(中東呼吸器症候群)

 感染はほとんどの中東諸国で報告されている。717日までに、837人が感染、うち291人が死亡。旅行者により、アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、オランダ、ドイツ、ギリシャ、マレーシア、フィリピン、インドネシアでも感染が報告されている。

 

チクングニ熱

 米国だけで35州にわたり、497人が感染。日本を除くアジア諸国、カリブ海諸国、アフリカ、イタリア、フランスに広がりをみせている。

 

腺ペスト

 14世紀で世界人口の1/3が死亡した「黒死病」と知られているものと同様。アメリカでは、4人が感染、1人が死亡。中国では、23日には北西部甘粛省の玉門市で1人が死亡、同市の住民3万人が市内に隔離されたほど、深刻な対応がとられている。

 

CREスーパーバグ

 カルパペネム系抗生物質に耐性をもつ、腸内細菌科の細菌による感染病が米国の病院で一年前と比べ、500%増加している。死亡率は50%と高く、早急な対応が必要とされる.抗生物質の過剰な使用の結果、人類は「抗生物質が全く効かない時代」に入ったのである。世界中で拡大の兆しをみせている。

 

 その他にも、デング熱、ウェストナイル、コロナウイルス、鳥インフルエンザ、豚インフルエンザ、ポリオといった感染症が世界のどこかで発生している。

 

 発展途上国の急速な都市化とそれに遅れを取る医療インフラ整備、感染症に対する国民の低い知識、経済不況で財政悪化による医療体制の悪化と崩壊、経済豊かさがもたらした抗生物質の過剰摂取、急増する都市化、航空コストの低下により、人間や貨物の移動の拡大、ウイルスの進化、免疫力の低下、異常気象など、パンデミックを起こす条件は整っている。

 

 

悪魔の申し子-エボラ
悪魔の申し子-エボラ