暴徒化するパリの抗議デモ

17.02.2017

Photo: dailystormer

 

 2月2日にパリで起きた、パリ警察の警官による移民の逮捕者への性的暴行がきっかけとなり、続いている抗議デモは16日には、パリ中心部まで飛び火した。パリメトロのパルペス駅周囲で抗議デモは暴動化、周囲のビル、商店やゴミ用容器に放火、商店のガラスを割り、略奪、警官隊への激しい攻撃を行った。12~15日の4日間だけで車79台が放火され、状況は悪化していると仏フィガロ紙は伝えている。

 

 パルペス駅は、ユーロスター、TGV発着駅でメトロ4号線、5号線と近郊列車が乗り入れるパリ北駅に近い。また近くには観光名所の一つであるサクレ・クール寺院がある。パリ北駅にはカレー難民キャンプの撤去に伴いカレーから行き場を失った難民がパリ北駅周辺に移ってきていた。2005年の暴動はバンリューから始まり全国に飛び火して大規模なものとなった。パリのデモは火炎瓶や投石、車への放火、商店のウインドウの破壊など過激さで知られる。

 

 

韓国人観光客のバス襲撃

 移民が多く住むバンリュー(注1)の一つであるボビニー近くの韓国人の団体ツアー客約40名を乗せたバスが11日、交通渋滞で停止している際に、5人の黒人と見られる男らに襲撃された。エッフェル塔の観光を終え、滞在しているホテル(サン・ドニ地区)に戻る途中で起きた事件である。バンリュー地区では抗議デモ隊の暴動化と警察隊との激しい対立が相次いで、パリ郊外の移民が40%以上占める地区では暴動化が深刻化している。下の地図で赤で示された地区に暴動が起きている。

 

 (注1)バンリューの低所得帯公営住宅には旧植民地(アルジェリア、モロッコ、)サハラ砂漠の南)から移民労働者が住み、犯罪率が高くドラッグ取引で社会問題化している。

 

Source: pamelageller

 

 男らはバスに乗り込み、火炎瓶に見える物で脅し、韓国人数人の頭を叩き、顔を平手打ちで叩くなど暴力を振った後、乗客から現金、貴重品、パスポート、ユーロスターの乗車券などを奪い、逃げる際に観光バスに放火しようとした。この事件を重く見た韓国政府はパリ観光への警告をだした。

 

 

囚人の60%はイスラム教 

 仏フィガロ紙によると、フランス刑務所の囚人の60%、仮釈放者の60%はイスラム教である。フランス若者の失業率が23.3%であるのに対して、ほとんどのパリ郊外の移民地区では失業率は50%以上である。そのため、これらのゲットー化した区域では特に若者の犯罪が高い。多くのイスラム教犯罪者でフランスの刑務所は次第に「過激思想のイスラム教」の教えの場となり、今では「イスラム教過激派テロリスト大学」とも呼ばれ、多くの過激思想をもつ若者を送り出している。

 

 

 パリはテロの警戒だけでなく、去年から観光客を狙う詐欺、ゆすり、盗難などの犯罪が増加、中国、日本、韓国などアジアからの観光客が激減している。2015年と比べ、2016年にパリを訪れた観光客は中国28%、日本39%、韓国27%と減少しており、治安が改善するまでこの傾向は続くと見られる。

 

 人口が増加するパリ郊外のゲットー化した移民区域、犯罪増加や暴動化する抗議デモでフランス警察は十分な対応できない状況に追い込まれている。暴動が長期化することで、現体制への不満でマリーヌ・ル・ペン氏の支持率は上がるものと思われる。一方、暴動が続けば観光産業に痛手となる。