フランスが抱えるイスラム化問題

Jan. 10, 2015


 仏風刺週刊誌「シャルリーエブド」のテロ事件には、欧州のイスラム化問題が背景にある。現在、欧州には5,200万人の欧州に定住し、世俗化したイスラム教徒がいる。そうして、最大のイスラム系コミュニティー(650万人)がフランスにある。その人数は、フランスの総人口の10%以上を占めるのである。


 ヨーロッパ諸国は減少する人口問題、つまり低下する生出率の対策として移民を受け入れる移民政策を2005年から積極にすすめてきた。フランスは特に、元植民地であった国や多くのイスラム国からの移民を受け入れた。その結果、2005年に1.9人であった生出率は2010年には2.02人, 2014年には 2.08人まで上がったのである。


 人口統計上、国の人口を維持するには生出率が2.1人必要で、それ以下は人口の消滅を招くとされている。問題は、ヨーロッパ系女性の生出率が1.8人に対してアラブ系女性は3.4人、トルコ系女性は3.7人と高いことにある。スラム教徒の人口が増え続ければ、2027年には、フランスの5 人に1 人、2048年には人口の過半数がイスラム教徒で、フランスはイスラム国になるとも言われている。

すなわち、フランスにおけるキリスト教文化の消滅である。



 2010年にリビヤの指導者カダフィは、「ヨーロッパには5,000万人のイスラム教徒がいる。神は、刀や銃を使わずイスラム教徒にヨーロッパでの勝利を与えてくれる。それは5,000万人のイスラム教徒が数十年以内に、ヨーロッパをイスラム国にするからである。」と予言した。それは、根拠のない予言ではなかったことがよく分かる。5,000万人のイスラム教徒の移民は、カダフィにとって、ヨーロッパに送り込んだトロイの木馬のようなものに見えたのかもしれない。



 急増するイスラム教徒に対して、多くのヨーロッパ人の間で、イスラム教への憎悪(イスラム・フォビア)が広がっている。ヨーロッパで広がりを見せている反イスラムデモや時期フランス大統領とも言われている、イスラム移民政策に反対姿勢を示している国民戦線党のマリー・ル・ペンへの圧倒的支持が、フランスのイスラム化への国民の危機感を反映している。



フランスのイスラム教徒が持つ原理主義的イスラム思想

 去年、イスラム国に関しての興味深い世論調査が行われた。ICM Unlimitedの調査結果によると、フランスのイスラム教徒の69%(414万人)がISIS:イスラム国を支持していると答えたのである。支持率の高さは、ISISへの参加者の数の多さにも反映されている。


 フランス系イスラム教徒700人以上がISISに参加、イスラム移民の多いヨーロッパ諸国の間では最も多い。そうして、去年1月に話題となったのが、南フランスの15歳のイスラム教青年が家出をして、ISISの戦闘員に志願したことである。このような18歳以下の未成年の参加者も12人以上もいるとされる。



 フランスのイスラム教徒の大半が原理主義的イスラム思想を持っているとしたら、今回のようなテロ事件が再び起きる可能性は高い。政治学者のサミュエル・P・ハンティントンの『文明の衝突と世界秩序の再創造』で指摘したように、過激なイスラム原理主義を信奉するイスラム化の現実にどう対応するのかが問われる。