再び注目される地球の磁極逆転

03.02.2018

Credit: NASA Goddard Space Flight Center/Duberstein

 

NOAAの発表した地球磁場の磁極シフトが2012年以降大きくなっている。過去のデータから地球磁場の逆転は20-30万年周期で起こることがわかっているので、逆転はあり得ない事象ではない。78万年間磁極逆転が起きていないため、現在は周期性から外れた異常な時代ともいえる。

 

磁極シフトが進み地球磁場が完全に逆転する状況に変わりはないとする警告ニューズウイークをはじめ多くのメデイアが取り上げたため再び注目を集めることとなった。磁極シフトが2012年以降、移動速度を早めたとなれば逆転の兆候と解釈されても不思議ではない。

 

磁極逆転が実際に起これば現代社会を支えている電子機器や電気器具から電力網までがまるでEMP攻撃のように崩れさる。これまで数世紀に渡り衛星データや数値計算で、逆転がいつ起こるかが調べられてきた。2014年から観測が開始されたESAの衛星データで、逆転に向けて加速する磁極シフトが確認された。地表での観測で北極の移動が加速している(下図)と矛盾しない。

 

 

Credit: NOAA

 

磁極逆転がなぜ文明を滅ぼすほどの影響を現代社会に与えるのかというと、地球磁気圏が太陽風の高エネルギー粒子流や宇宙線から地球を守ってくれているからである。地球を守る最前線に当たる地球磁気圏シースでは太陽から吹き付ける猛烈なプラズマの嵐を跳ね返しているから、地球上では電子機器や電気器具が使え、列車や飛行機が運行できている。

 

磁極が反転するには磁場が弱まる過程を経るため、太陽風を遮るものがなくなってしまう。しかも、地球上の電子機器、電力網、電気器具を壊滅させるだけでなく、荒れ狂う太陽風は磁極が反転し終えるまでの何世紀もの間、地球に吹き付けることになる。

 

太陽風の影響や放射線の影響を避けるには地下に逃げるか、地球を捨てて惑星間の移動で他の惑星に移住するかだが、どちらも7.6億の人口を維持することはできない。現在できることは磁極の移動の観測体制を強化して変化を正確に観測することである。EMP対策や地下シェルターで磁極逆転に備えることができる。皮肉なことにEMPが核戦争の一環で考慮するよりも磁極逆転のリスクの方が高くなった。