一瞬で現代文明を滅ぼす太陽フレアの脅威

20.05.2017

Photo: 15mscience

 

地球上の動植物は太陽活動に依存しているが、時には人類の築き上げた文明を一瞬で滅ぼす脅威となることを我々はほとんど意識していない。太陽放射は地表気温を支配する最大因子であると同時に、現代を支える電子機器・送電網・ライフラインの運用を左右することを意識する必要がある。

 

2005年1月20日15時半(世界時20日6時半)に、X7.1の非常に大きなフレア(太陽爆発)が発生した。これは720黒点群による一連の活動の中でも最大のフレアで、衛星通信が10分間異常をきたした。またNASAによると、2012年7月の太陽フレアも地球を壊滅させるほどの規模だった。

 

最近では2017年4月21日にも太陽フレアの影響で、コロナホール(太陽のコロナの密度が低い領域)が生成し、太陽風が吹き出した。 そのため4月23日から24日にかけて、太陽風で荷電粒子が地球に到着し、地球磁場が影響を受けた。一般的には太陽嵐が起きると地球に電磁波が8分後に到達して電波障害が発生、その後数時間で放射線が到達、最後にコロナからの荷電粒子放出(CME)の影響が数日後に起こると考えられている。

 

送電網に影響を与えるCME起源の荷電粒子の影響がでるのは、23-24日のはずだったが、4月21日に起きたサンフランシスコなど北米の大都市の停電はフレア発生とほとんど同時だった。これは電磁波の影響で送電網に不具合を発生させたことによる。

 

送電網や通信施設に影響が出る規模の太陽嵐では、通信と電力が完全に麻痺するので、地震や津波だけでなく普段から全国規模の「全電源喪失」が起きる。過去の太陽フレア事象として1859年の太陽フレアによる磁気嵐がキャリントン事象として知られている。

 

このときには全欧州と北米でオーロラが出現し、当時唯一の電子機器であった電報システムが停止し、混乱に陥った。しかし現代社会は当時とは比較にならないほど電子機器に依存している。同じクラスの太陽フレアが出現すれば築き上げた文明は一瞬で消えさり、社会混乱の規模は想像できない規模になる。

 

送電網、車のECUとエンジン、航空機の電源、操縦システムとエンジン、携帯端末、電話・ファックス、インターネット、WiFi、公共交通機関、ATM、エレベーターなどすべての電子機器の導体に誘導起電力が生じ回路が破損して使えなくなる。金庫など金属容器の中に保管しておいた電子機器だけが生き残るが、それでも基地局や送信局が機能停止するので使えないことに変わりはない。(アマチュア無線機を金庫に保管している人を除いて)、情報通信も移動手段もそしてライフラインも喪失する。

 

キャリントン事象クラスの太陽フレアが起きれば世界中が災害地域となる。太陽フレアに関する最新情報は日本語英語の宇宙天気予報で知ることができる。地下シェルターや鉄製のトレーラーハウスは安全なシールドとなる。また不要になったトランシーバーも捨てずに手提げ金庫の中に置いておけば、いざという時に役にたつ。太陽フレアの脅威を警告する記事はネットに溢れるが、いざという時どうしたらよいか、心構えについては驚くほど記事がない。

 

普段からXクラスの大規模な太陽フレアが起きたときのイメージトレーニングが必要なのである。人間の恐怖は無知から来る。突然の停電や電子機器の黒焦げ状態を目の当たりにしても、太陽フレアの知識が頭にあれば落ち着いて行動できる。スマホなど携帯電子機器が損傷した場合、最も怖いのは使えなくなることではない。極端に薄いLiイオンバッテリーのセパレータが過電流で短絡し爆発的に火災を起こしかねないことである。またケースを伝わる電流が突起で放電することはサムソンのスマホ事故を考えれば、容易に想像できる。

 

使えなくなったことで気がついたときにはスマホから離れた方が安全である。また車のエンジンがストップしたときにはギアをニュートラルにして慣性で路肩に車を移動させよう。といってもMT車の話で、電子制御MTやAT車は何もすることができない。下り坂気味の道路に停車したときには、ハンドルを路肩方向に切っておくのがよい。高速道路ではハンドルをきらない方が安全な場合が多い。またむやみに車外に出ることは危険なことがあるので注意しよう。

 

エレベーターは停電対策が施されているのでパニックになる必要はない。落下することがないしくみになっている。電車が止まっても落ち着いて指示にしたがうこと。

 

緊急時のために飲料水は確保しておくべきである。高性能のフイルターがあれば河川の水や雨水が飲める。水さえあれば生命活動はしばらくのあいだ保証されるのでパニックになる必要は全くない。

 

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