欧州でも急増するオピオイド系鎮痛剤中毒症

28.10.2017

Photo: arkansasmatters

 

 米国の社会問題になったオピオイド系鎮痛剤中毒症が欧州に飛び火してここでも蔓延の兆しをみせている。依存性の高いオピオイド系鎮痛剤はケシの抽出成分を含んでいるため、その強い鎮痛効果と依存性でモルヒネより強い医療用麻薬として使われてきた。米国では過剰摂取で死亡する摂取者が一番多い薬物となっており、トランプ大統領は16日に健康被害をもたらす「伝染病」指定をした。

 

 米国では、2007年頃から鎮痛剤の依存症や過重摂取による中毒死の増加が社会問題となっている。2015年には5万2000人、2016年には過去最高の5万9,000人が死亡している。

 

 欧州でも危険なオピオイドを処方する医者が増えている。2015年の欧州の薬物過剰摂取による死者は8,441人の81%がオピオイド系鎮痛剤である。米国でのオピオイド系鎮痛剤の処方が増えだしたのは2011年からで、もともとはケシから抽出されていたオピオイドが合成されだしてから、生産量が急増しており特に中国から大量に輸入されている。

 

 

危険度の高い合成オピオイド

オピオイド過剰摂取による死者数は2000年から2015年の間にオピオイド系全体で2.94倍、モルヒネの100倍強力といわれる合成オピオイド系では11倍に急増した。昨年の米国の薬物過剰摂取による死亡者数は64,000名で2015年の52,000名から増大する傾向にある。欧州の死者数の増加傾向は米国から「伝染病」のように欧州に広がりつつあることを示している。もっとも危険なものは代表的な合成オピオイド系鎮痛剤のファンタニルとその誘導体である。

 

 オピオイドの危険性を知りながら製薬会社が売り込みを続け、医者も処方を続け、中には不正診療報酬を行うものもいる。欧州に米国の「伝染病」のリスクが忍び寄っている。食い止めるには医療機関の努力だけではなく危険性の高い合成オピオイドの輸入を禁止する政治的措置が必要だ。

 

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