オピオイドに代わる新しい強力鎮痛剤UKH-1114

17.08.2017

Photo: sciencealert

 

テキサス大学オースチン校の研究グループは従来は知られていなかった痛み信号伝達系に働く強力な鎮痛剤UKH-1114を発見した(ACS Chemical Neuroscience, 2017; 8 (8): 1801)。研究グループはマウス実験で従来の鎮痛剤(てんかん・発作で投与されるガバペンチン)よりも長時間効果を持続することを確認した。

 

ヒトへの臨床試験が済み安全性が確立されれば現在、投与が問題視されているオピオイド系鎮痛剤(注1)を置き換えることができる。

 

(注1)医療機関からオピオイド系鎮痛剤を処方された患者は依存症となり、次第に摂取量が増え、不足すれば麻薬と同じように極度の依存症となる。オピオイド系鎮痛剤は米国の医療機関が処方を続けたことで、依存症患者を生み出し麻薬カルテルの収益源となり社会問題化した。

 

米国民の1/3が慢性的な痛みに悩んでいる。しかしこれまで医師が処方してきたオピオイド系鎮痛剤は依存症になることが明らかになった。現在、オピオイド依存症が200万人にのぼる。しかしオピオイドに代わる鎮痛剤は副作用がある。例えばガバペンチンでは意識障害を誘発する。このため他の機構の鎮痛作用を持つ非オピオイド系鎮痛剤の開発が急がれていた。

 

研究グループが開発したUKH-1114はシグマ2受容体という中枢神経伝達回系を通して受容体に取り込まれる。神経を損傷したマウスへの投与ではガパペンチンの1/6で12倍以上鎮痛効果が持続することがわかった。

 

神経因性疼痛とされる慢性の痛みは中枢神経の神経が損傷を受けることで生じる。その原因は化学療法、糖尿病、脊髄や脳神経の損傷など様々であるが、研究で明らかになったシグマ2受容体(下図)の活性化が鎮痛作用をもたらすメカニズム解明は重要な研究テーマとなっている。

 

 

Credit: sciencedirect