社会問題化する親と同居する若者の増加

07.10.2016

Credit: Genaro Molina, Los Angeles

 

 2008年の世界金融危機以降、世界中で親と同居する若者の増加が続いている。経済協力開発機構(OECD)のレポートによると、加盟国34カ国のうち、20072014年に最も増加率が高かったのはフランスで、親同居率は53.5%であった。

「成人したら親元を離れる」という文化も、若者の失業の増加といった経済的理由から社会問題化している。

 

 OECDは「図表で見る世界の社会問題」と題したレポートで、社会問題のトレンドを定量化し、国際比較を行っている。調査対象になっているのは1529歳で、2015年についての結果である。

 

 

 最も親同居率が高いのはイタリアの80.6%に続き、スロベニアの76.4%  ギリシャの76.3%であった。これらの3カ国には従来から、親と同居する文化はあるが、経済危機後の経済回復は果たしておらず、若者(1529歳)の失業率はイタリア、スロベニア、ギリシャではそれぞれ26.9%, 17.3%, 24.7%と高い水準にある。若者の失業率が16.6%のフランスは20072014年にOECD加盟国の間では、最も高い12.5%の増加となり、親同居率は53.5%であった。

 

 

 

 アメリカも親同居率は増加傾向にある。金融危機前の63%から66.6%に増加している。OECDのレポート以外にも、米世論調査機関のピュー・レサーチ・センターの分析では、1834歳の若者の32.1%が親と同居している。1940年の親同居率が35%となって以来初めて、親と同居する若者の数が、一人暮らしや配偶者・パートナーなどと同居する若者の数を上回ったことになる。

 

 

 

 

 経済的理由で増え続ける親と同居する若者によって、若者の自立する年齢が上がり、または自立できない若者が増える可能性を秘めている。生産活動の低下、消費、結婚や家族などに対する考えや価値観の変化、親への経済的負担などは社会問題となっていき、大きく社会を変えていくと思われる。