「若年層経済不快指数」でみるアメリカ

Jan. 8, 2015

 

 アメリカは「大きく変わる」との期待でオバマ政権が発足して6年。この間、国民の期待は裏切られた上、今では若者世代は最も厳しい経済環境におかれている。その深刻な状況と不満を反映して、「若年層経済不快指数」は最高水準に達した。

 

Youth Misery Index

 「若年層経済不快指数」(Youth Misery Index: YMI)とは、毎年アメリカ若年財団が発表する、若年失業率、学生ローン負債の平均と一人当たりの米国債務を合計した指数である。この指数をみることで、現状の経済状況と将来の景気状況と国の姿がみえてくる。



 2014年の若年失業率は18.1%と、大学や就職していない16から24歳の600万人である。その中の多くは厳しい経済環境により求職活動を断念した若者である。

 


ローン債務を持つ学生達

 学生ローンによる債務も2008年から前年比約6%の増加が続いている。2014年12月末時点で、学生ローン債務残高は連邦教育ローンと民間教育ローンを合わせて1.3兆ドルと初めて1兆ドルを超え、今では住宅ローン、自動車ローン、クレジットカードローンを上回っている。債務残高が増加している背景には、学費の高騰(1970から275%の増加)、寮費や食費といった生活費用の増加が主である。今では大学卒業までの4年間に必要な出費は少なくとも10万ドルともいわれている。


  2014の一人当たりの平均学生ローンは3万ドルと高く(20年前と比べれば2倍)、大学卒業者の約70%は学生ローン債務を抱えていることになる。2012年当時の連邦準備制度理事会((FRB)の議長であったベン・バーナンキは議会公聴会で、自分の息子も40万ドルの学生ローンを抱えていることを暴露、一般の中流家庭でさえ、大学教育を負担できなくなっていることを指摘した。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

若者達の現実

 大学進学の理由は日本と同様、「より収入の高い職に就くため」とメリットがあると考えているからである。実際、大学卒の賃金は高卒より高いが、問題は2008年のリーマン・ショック後の新規雇用の大半は低賃金やパートタイムのサービス業であること。学生ローンを抱えて卒業しても、低賃金の職しかないため、返済ができなくなるか貧困レベル以下の生活を余儀なくされるかの状況に置かれているのである。

 

 学生ローンの債務問題は若年層に大きな影響を与えている。その一つが、親との同居である。大学をきっかけに親から独立するのが一般的であったが、今では学生ローンの返済で27%の32歳以下の若者は親の家に戻り、一緒に暮らしているのである。24%は、希望する職種を断念、債務返済が可能な職についたとされ、14%は結婚を延期まだは止めたとされる。40%は高額商品(自動車や家)の購入を止めたとされる。若年層の価値観や購買意欲が変わりつつあり、その影響は社会全体に波及することになる。

 

消えたアメリカン・ドリーム

 史上最大の連邦債務の一人当たりの債務額58,437ドルを合計すれば、YMIは106.5と2013年の98.6 から大きく上昇している。オバマ政権が発足してから、驚くべき53.7%も上昇している。言い換えれば、オバマ大統領は若年層が「アメリカン・ドリーム」を果たす機会を奪った最悪の大統領として歴史に残ることになる。