米国フードスタンプの深刻さ

Dec. 27, 2014

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  NYダウが史上最高値を更新していることから、米国景気回復が期待されているが、現実は経済が2極化しており、1%以外のアメリカ社会の貧困化が加速している。この状況を反映しているのが、フードスタンプ受給者の増加である。


フードスタンプとは

 補助的栄養支援プログラム (Supplemental Nutrition Assistance Program: SNAP)通称フードスタンプ制度は、低所得者や無所得者が食品を購入できるように支援するもので、現金の支給ではなく、政府発行の電子カードを使用して食品を購入するシステムである。受け取れる補助は1人当たり平均月125ドルで、食料品に限り一般的なスーパーから大型店舗のウォルマート、ターゲット、コストコを始めとした大多数の店舗で使用できる。

 

 フードスタンプ受給者は2000 年から2013年の間に177%も増加している。特に大幅な増加を見せたのは、2008年のリーマンショク後である。 


 今では、米国農務省予算のうち約61%の854億ドルがフードスタンプで占めている。受給者は約4800万人で、これは実に国民の7人に1人である。いかに、アメリカ社会全体が貧困化しているかを表している。

 


フードスタンプ制度を推進する大企業

 一度受けると止められないと言われているフードスタンプ。だが、それは個人だけに限る話ではない。銀行、小売店(特に大型店舗)、食料品や衣料水メーカーなどの多くの企業がフードスタンプ制度に群がって、依存関係にある。


 銀行はフードスタンプで使用する電子カードでの購入取引を管理している。その取引手数料は農務省から支払われる。ウォルマートなどの小売店は、フードスタンプ受給者による商品購入に依存している。実に、売り上げの約20%を占めているのである。フードスタンプ受給者は食料品や飲料水メーカーにとっても大きなマーケットシェアを占めている。


 

 フードスタンプ制度の制度改革を求める動きはあるが、多くの依存関係にある企業によって進展は妨げられる。景気が悪化すればするほど、企業はより多くのフードスタンプ受給者を求め、受給条件の緩和を求める。また、景気が悪化すればするほど、生活は貧困化、フードスタンプ受給者は増加する。国が破綻しない限り、この依存関係からの悪循環なシステムから抜け出すことはできないであろう。