東京金現物市場が取引開始

27.07.2016

Photo: Coin Week

 

 東京商品取引場は、2016725日から金の現物市場を開始した。これまで、金のスポット、先物の取引等は、現物の受渡しを伴わない差金決済方法に限られていた。現物市場の開始で、金の現物の受渡しを伴う受渡決済方法を選ぶことが可能となった。世界の金の消費がアジアに集中するなか、金取引のアジアの拠点を目指す上海とシンガーポールに東京が加わることになる。

 

日本の大手貴金属企業の対応

 日本でも、アベノミクスの失敗、不透明な景気先行き、マイナス金利などで金の需要は増加傾向にある。2015年の金需要は32.8トンで、前年度から83%増である。田中貴金属工業によると、同社の2016年上半期の金販売量は前年同期比で30.2%増加したと発表している。

 

 金需要の増加, 将来の供給不足、東京の現物金取引所の設立などに備えて、田中貴金属工業はスイスの貴金属精錬大手のメタローテクロノジーズを買収した。メタロー社は、貴金属回収精錬、表面処理薬品、電子材料の3事業で事業展開、欧州やアジアなど世界17国に事業拠点を持つ。

 

 アサヒホールディング社も、20156月に世界的にブランド力が高いジョンソン・マッセイの貴金属の精錬・加工業事業、特に金・銀の精錬において高い競争力を持つ英国子会社GSRホールデイングス(ロンドン)を買収している。

 

Source: worldchartsrus.com.

  

世界の金市場の動き 

 世界の金価格の金値決めはこれまでロンドンとニューヨークで行われ、ドル建て価格は世界のベンチマークである。しかし、4月から上海金取引所では、人民元立ての金の値決めが始まり、国際金取引における中国の影響力は高まっている。

 

 ワールド・ゴールド・カウンシルよると、2015年世界の年間金需要は4,212トンであった。そのうち、中国需要は2,596トンで、全体の62%を占める。201616月期の需要は973トンで中国は世界最大の金需要国である。背景にあるのは、貨幣価値の低下、不換紙幣への不信感、経済先行きへの不安で安全資産を求める、中国政府が金の裏付けによる人民元を目指していることが金の需要の増加につながっている。

 

  長年欧米の特定の大手銀行が貴金属価格を決め、価格の不正操作を行ってきた。投資資金を株式に向けるため、金・銀の価格を低く抑え、市場における市場参加者による価格発見機能が働かない状態を維持してきた。しかし、中国やロシアは市場における値決めメカニズムの正常化を求め、現物取引にシフトした。日本もそこに加わったことで金市場のアジア拠点化が進むであろう。