EU離脱をめぐる国民投票後に起きること

23.06.2016

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 英国のEU残留か離脱を巡る国民投票に関して、最新の各種世論調査で結果は異なるが、離脱が残留を上回りそうな勢いである。この国民投票に関して、あまりよく知られていないことは、投票結果がEU離脱となる場合に何が起きるかである。

 

 国民投票結果には法的拘束がないため、直ちに英国のEU離脱手続きが始まるものではないが、政府は政治的判断を選択しなければならなくなる。国民の声を尊重して、政府が離脱の法的手続きを始めるとは限らない。国民の声を無視して残留を選択する場合も考えられる。例えば、キャメロン首相は英国議会で離脱賛成の全会一致の決議を求めることができる。その場合、過半数以上を占める野党が残留支持であることから、議会で離脱賛成の決議が成立するのは困難になる。

 

最終決定権は誰の手に

 BBCによると、庶民院では454147の残留支持があるため、国民投票で離脱の結果が出た場合、議会決議で国民投票の結果を覆すことができ、この手段が検討されていると報じている。政府は有権者が選んだ議員の「声」を尊重するといった名目で、EUに残留することができることになる。

 

離脱プロセス

 英政府が国民投票の離脱結果を支持する場合、手続上キャメロン首相はリスボン条約の第50条項を行使することから始まる。EU理事会に対して、正式に英国のEU離脱を通告する。通告は法的拘束があるため、後から離脱を取り消すことはできない。

 

 その後、EU離脱に向けての脱退とEUとの新たな関係の枠組み創設の協定交渉に入る。交渉期間は2年で、EU加盟全 28カ国の合意がない限り、交渉の延期はできないことになっている。交渉の難関となるのが、英国のEU市場へのアクセスについて、どこまでEU法を受容するかである。またEU側は、英国との関係で得られる政治・経済的メリットにより、どこまでEU法からの免除を許容するかである。2018年までに協定交渉を終えるには、英国はかなりの政治的手段と妥協が必要となる。

 

EUの重みと代償

 どのような結果になるにしても、国民の政治に対する不信は増す一方で、国民は初めてEU加盟の意味と重みを認識することになる。