英国をEU離脱に向かわせる移民問題

08.06.2016

Photo: Independent

 

英国のEU離脱を巡って離脱に肯定的な世論が過半数を超えた。その背景を探ると、EUから英国への移民の方が英国市民より雇用の機会が多い、ということに国民が不満を持っていることがわかった。さらにその移民たちが英国外の国よりも雇用機会が恵まれているのである。

 

財政的には不利とされるのに”Brexit”と呼ばれるEU離脱に国民の多くが同調する原因はこの労働者の機会不均等と不満によるところが大きい。先週の統計で移民の雇用率は85.9%で英国市民より5%高水準にある。EU以外の移民の雇用率は69.2%であった。つまりEUからの移民に特別の優遇政策がとられているのである。

 

EUにいる以上、EUの基準に従わざるを得ないため、英国はEUからの移民を優遇しなければならない。EU離脱により移民が出身国に依存しない雇用機会を得る「公平性」が実現するのである。これまでEU移民が雇用で優遇されて最貧層労働者がもろにその影響を受けてきた。

 

 

さらに最近の急速なEU移民の増加で、労働者層が行き過ぎた雇用の競争におかれている現実がEU離脱論を後押しする。この不公平感はEUからの移民も他の国からの移民も公平な雇用機会を与えることでしか解決しない。そのためにはEU離脱しかない、というのが骨子となり世論を動かす結果となった。

 

国民投票の登録者は昨日の締め切り日に226千人となった。そのうち15万人は35歳以下の若者で、いかに若い世代が関心を持っているかがうかがえる。それでも登録者数は750万人も少なかった。先週は1週間で若い世代の40万人が623日の投票に登録した。棄権した人たちの中には個人情報(健康保険番号)を明かしたくないという人たちもいた。全投票数はおよそ460万になる。

 

予想は混沌としているが、最近の世論調査の結果はEU離脱に賛成する人が過半数を超えた。キャメロン首相の離脱反対意見は主に財政難に陥ることだが、愛国心に訴えれば訴えるほど現実の不合理な移民政策に火を注ぐ結果となった。

 

 

Source: SPECTATOR

 

英国はもともと移民に対して寛容な態度を取ってきた。しかし問題となっているEUからの移民は特殊な事情を抱える。2004年のEUからの移民は167千人であったのが、2012年に1014千人となった。中でも目立つのが646千人のポーランド人である(大和総研)。

 

移民の多くは都市部(ロンドン)周辺に集中するため、治安の悪化や雇用の過当競争を生み出した。EU離脱により急激な移民の増加に歯止めがかかることになる。経済的損失はIMFや英国中銀が警告している。経済損失と安定雇用の選択を迫られた若い世代の動向が英国の未来を左右する。623日の国民投票が正念場となる。