再び超音速に挑むエアバス社

Aug. 9, 2015

Photo: Science Alert


 コンコルドのドゴール空港での悲劇的な墜落事故まで超音速旅客機コンコルドは無事故であった。事故をきっかけにして、ジェット機が音速を超える時に発する衝撃波の問題で高まりつつあった超音速機への批判をかわすことができずに現役を離れ、空港でその美しい姿をみることはできなくなった。


 機体の開発はフランスと英国の航空機メーカーが技術の粋を結集し、パイロットは選び抜かれた超エリートたち。事故は残念なことにコンコルドに責任はなく滑走路に破片を落としてそれを引っ掛けたコンコルドの燃料タンクを破損したことであった。


 コンコルドは当時の西欧の技術力を象徴する存在であったため、ソ連は非常によく似たTu-144を開発した。コンコルドスキーと呼ばれたこの機体もコンコルド同様に、衝撃波問題と経済性の問題で退いたため、以後超音速機は途絶えたままであった。


エアバスがこのほどマッハ4-4.5の新型超音速機の特許を米国特許局に申請した。この速度で飛べば計算上はロンドン−ニューヨーク間を1時間で結ぶことになり、コンコルドの3.5時間を大幅に短縮する。コンコルドはエアバス社の前身であるフランスと英国の航空機メーカーが製作したので、エアバス社の挑戦は2度目となる。


エアバス社の試算ではパリ−サンフランシスコ、東京−ロスアンジェルス間が3時間の旅になるという。この飛行機の特徴は推進力がハイブリッドである点。高度に依存して異なる型式の推進力を使うもので、そのため機体にはターボジェットエンジン、ラムジェットエンジン、そしてロケットエンジンが取り付けられている。最高速度は4,800km/hとなる。


推進力の必要な離陸時にターボジェットとロケットエンジンを使用し、離陸後は垂直に上昇する。高度が得られたらターボジェットエンジンは停止してロケットエンジンで30,500mまで上昇する。


巡航時はロケットエンジンも停止してラムジェットエンジンでマッハ4.5で飛ぶ。エアバス社は燃料として水素を用いることによりコンコルドの批判のひとつであった環境汚染の問題をクリアできるとしている。また機体の設計で衝撃波を減少する工夫がなされている。


運用経費の観点からすれば、20人乗りの超音速機はコンコルド同様に利益を出せる見込みは少ないが、プライベートジェットなら中東から、また軍用機用途では偵察機や攻撃機として声がかかる可能性は高い。すでにA-380という世界最大の旅客機を持ち、さらに超音速機のカテゴリーでも唯一の存在になり、ボーイングを引き離したいエアバス社にとって、取り組む価値を認めたのだろう。

 

一方のボーイング社にも超音速機のカードがないわけでもない。しかし環境問題と大量輸送時代、そして何より経済コストが問われる現在とは縁が薄いようにみえてしまう。ちなみに機体の外にぶら下げられたジェットエンジンは使わないとき内部に収納される。このままではマッハ4で飛行できるわけはないが、エンジンの可動式はいただけない。機体内部に収め空気取り入れ口をふさぐ方が現実的である。いずれにせよこのサイズは明らかに補助用でロケットエンジンがメインとみるべきである。そうなると超音速滑空機と競争関係が生じるかもしれない。