中国企業化したSegway

Aug. 27, 2015

Photo: Enterpreneur


日本では規制がきびしいことが災いして街中でSegwayをみかけることはない。しかし中国にはSegwayのコピーが溢れている。外観はしかしSegwayと比較すると相当にコンパクトで、女性に人気があるようだ。


あるときショッピングモールでエレベーターに乗り込んで奥に移動すると、ドアが閉まる直前に女性が滑り込むように乗り込んできた。振り向くと瀬が高い理由がわかった。Segwayコピーに乗っているのだ。周りの人たちは平然としている、ということはこうした光景に慣れてしまっているのだろう。


Segwayはニューハンプシャー州のベンチャー企業であったが、2015年に北京を拠点とする中国のNinebot社が買収した。詳しい買収条件は公表されていないが、企業買収は投資家に高評価のようでNinebot社はMIUI Technologyなど4社から総額8,000万ドルの融資を受けた、ことを公表した。


2001年に売り出されたSegwayは発売当時、ジャイロとDCモーターで自立走行するメカニズム(注1)により、歩行を置き換えるインパクトをもつ未来の乗り物として期待が高まった。


しかし3,000ドルをはるかに上回る値段と(一部の国では法規制により)普及という点では失敗であった。おもに使われるのは展示会やイベント会場のデモにとどまった。



Photo: ecotourchina.com

 

それでもSegway社は存在感を示し80カ国に250箇所の販売拠点を持つ。Segway社とNinebot社は共同で近距離輸送システムを開発し販売していくという。そのためにはSegwayの知名度と販売網がものをいうし、Ninebot社が自信を持つ低価格機種が揃えば、伸び悩んでいたSegwaym流のトランスポーターの販売を伸ばせるかもしれない。

 

ところでNinebot社こそ筆者の目撃した女性が軽々と乗りこなしていたSegwayコピーを製造販売している会社である。いってみればカシオがapple watchの製造販売権を持つようなもの。Segwayというブランドで安いコピーマシンを売り出すことで、普及を目指す。皮肉なことにNinebot社は2014年にSegwayから特許権の訴訟を受けている。誰の目にもコピーは明らかであるが、低価格で普及させる、という観点からみればSegwayばかりでは限界があったことも事実である。

 

市販PCの起源はIBM PCであった。IBM PCはコピー機種が出回った。例えばFujitsuのPCなど。しかしIBM社はいちいち特許訴訟を起こさず市場に同型PCがでまわることを許した。

 

市場をIBM PC同型機種が行きわたることは、当時発展途上であったPC市場のパイを大きくすることに役立ち、上位機種としてIBMbウランドが絶対的優位に立てることを知っていたからである。

 

Segwayコピーは形こそ異なるがトヨタをはじめ世界中の企業が手がけているが、今回の買収によって低価格Segwayコピーが腫れてSegway製品としてデビューする。中国製品を購入することをためらっていた消費者がSegwayブランドに飛びつくのか、興味が保たれる。

 

(注1)Segwayの秘密はDCサーボモーターとジャイロと傾斜計が一体となった3次元加速度センサーからのフイードバックにある。簡単にいうと一輪車の安定には細かく車輪を前後にふらすが、」DCサーボモーターははるかに高い周波数でそれを行うフイードバックという技術で、人間が乗って直立したときあたかも静止したようにみえるが、実際には前後に細かくふれている。Segwayの特徴は動く方向を体重移動によって行う点である。皮肉なことにamazonで5,000ドルを払って購入できる成人の多くは肥満対策で自分で歩くことを望んでいるため、購買可能層と嗜好性が整合しなかったことが失敗の原因とされている。