地中エンジニアリングで金塊列車発見

Aug. 31, 2015

Photo: The Japan Times


隠された金塊発見というと「徳川黄金伝説」や「M資金」が頭に浮かぶが、こちらはもっと現実味がある。ポーランド政府が地中探査レーダーでナチスが隠した金塊を積んだ列車を発見したと発表した。

 


行方不明になったナチス黄金列車

1945年春にロシア軍を避けてドイツ軍が列車に金塊や宝石を満載した列車がWalbrzych(下の地図)の近くで行方不明となった。そこで「お宝ハンター」たちがこの黄金列車を探し続けていた他、共産党政権時代に政府も調査したが見つけることはできなかったようだ。


最近になってポーランド人とドイツ人の二人組が弁護士を通じて黄金列車を発見したことを当局に知らせるとともに、報奨金として10%を正式に要求した。副首相のZuchowskiは地中レーダーのイメージは分解能が低いが100mあるとされる列車に間違いないとコメントした。



Photo: EXTREME TECH


所有権を主張するユダヤ人 

これに対して世界ユダヤ連盟(World Jewish Congress)は当時の金塊と宝石はポーランド系ユダヤ人の所有物であり、ただちに返還されるべきだとしている。

 

Zuchowskiによればポーランド陸軍の手による本格的な発掘調査は数週間を要するという。なぜなら黄金列車には爆薬が仕掛けられていて爆発物処理部隊以外では発掘が危険をともなうからだ。

 


地中エンジニアリングのお手柄

地中探査レーダーは写真のように小型化していて持ち運びが便利である。戦後処理の中で隠された金塊の噂は後を絶たない。ひとつには昨今の経済低迷に際して金本位制への復帰を望む声が高くなり、世界の金保有の情勢も変化が大きいこともあるのかもしれない。地中探査レーダーはポーランドの黄金列車以外にも隠された金塊をみつけることができるかもしれない。空洞や水道管などをのかわりに容易に金塊をみつけられるとしたら夢が膨らむ。


 Photo: TANAKA

 

 

ポーランドの黄金列車の金塊は300トン。2億ドルの価値があるという。これだけで日本の金保有量の半分近い。金がユダヤ人に返還されるかどうかは別にしてもポーランドの金保有量が一気に300トン増えることになる。


所有者の要求について

金塊と宝石の所有者としてユダヤ人が名乗りを上げているが、「お宝発見」では他にも所有者を主張してくる人たちが必ず現れる。


金塊列車には「アンバールーム」(注1)と呼ばれる車両があった。この「アンバールーム」は時価250万ポンド相当の琥珀が積まれていた。この琥珀はドイツ軍が大戦中にペテルスベルグに侵攻し宮殿から盗んだもの。


つまりユダヤ人の主張と異なる起源の宝石が大量に存在し、その所有者はロシアということになる。ポーランド政府が慎重に発掘調査を行わなければならない理由はここにある。


しかし副首相Zuchowskiは法律上はポーランド財務省が所有権を持つことを明言した。発掘後の所有権は決着がつかないまま、発掘作業が行われることになりそうだ。


(注1)アンバールーム(琥珀の間)はペテルスブルグのエカテリーナ宮殿にある。1716年にプロシア王からピョートル大帝に送られたもの。1941年のドイツ軍の侵攻でエカテリーナ宮殿からケーニスベルグに持ち出したが、1945年に陥落してから行方不明となっていた。琥珀の間の主な装飾は琥珀でできた壁面であった。


ロシアは記録を頼りに戦後、琥珀の間を再建したがオリジナルは長い間行方不明のままであった。再建された琥珀の間(下の写真)が公開されたのは2003年のことであるが、1990年には世界遺産となっている。