Aoms for peaceの負の報酬

Sept. 25, 2014

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 原発への反撥は福島の事故以来、全国各地で高まりを見せ、単純な住民の投票を行えば多数を占めることは明らかである。一方で原子力政策の変更に抵抗する政府は原発再稼働に躍起となっている。脱原発となっても化石燃料の高騰で電気料金は値上げとなり、再生エネルギーへの転換が模索されている。一体、日本の電気料金は世界的に高いのか、という問題は誰しも興味がある。


複雑な電気料金
 実はそう簡単ではないのである。統計はエネルギー白書やOECD公表データなどから各国の電気料金の変遷が得られ、基軸通貨であるドルに変換すれば形式的には共通通貨単位の電気料金が得られる。これはよく知られているように2000年頃から一般的な上昇トレンドに入り、最近は上位トップ3はイタリア、ドイツ、日本の順ではるか下に米国がある。どこかガソリン価格に似ていないでもないが、対ドル為替レートには国によって大きな開きがあり、その補正をするとドイツ、イタリア、日本に順位が入れ替わる。

 

 またさすがの米国も上昇が免れない。厳密には基軸通貨自身の価値が大幅に下落していることを考慮すれば、米国の優位性はさらに小さくまた上位国は実質的に下がって、格差は減少するだろう。それでも上位3国は不動である。一体その理由は何だろう。

 2008年以降の日本の電力料金の上昇は311東日本大震災にともなう福島第一原発事故以来の原発が稼働停止で化石燃料の寄与が大きくなったことが反映されている。ドイツの家庭用電気料金は何故、世界第一位という不名誉に輝いたのか。

 


再生可能エネルギーへの転換

 ドイツは2022年までに原発は廃炉にするので、廃炉費用が必要経費となる。一方でそれを補うのが再生可能エネルギーであるが、その整備と買い取り賦課金が余計な出費で住民が背負わされているのだ。つまりすでに存在している原発を廃炉にしてクリーンなエネルギーに転換するには、1)廃炉費用、2)再生エネルギー発電整備費用、3)買い取り賦課金、再保険金が上乗せされるので、大口利用者を除けば高い電気に泣くことになる。



各国の再生エネルギー発電量
 再生可能エネルギーへの転換にはこのような一般的な裏事情があった。再生エネルギーの発電量の上位3国は、米国、ドイツ、中国でスペイン、インド、日本と続く。日本の電気料金の低減には送受電分離や大規模メガソーラー導入のシナリオが不可欠であるが、再生可能エネルギーの発電が軌道に乗り出す頃には、電気料金の上昇という負の報酬も不可避と考えなくてはいけない。その時にはもう原発に後戻りは選択肢にはない。再生可能エネルギーへの転換は痛みを伴う。そこまで考慮しても核燃料廃棄コストとリスクに比較することはできないだろう。

 


Atoms for peaceの負の報酬

 Atoms for peaceの報酬をどうやって払うのか。子供達に先送りたくない遺産である。ここであきらめることはない。廃炉と核燃料廃棄のテクノロジーを開発し輸出して、その利益を使い、再生可能エネルギーの費用を相殺できるだろう。