火山の女神の贈り物

Oct. 21, 2014

 

 Boeing747やA380などの4発ジェット機の4発が同時に停止する確率は通常無視できるほど小さいがゼロではない。実際に4発が同時停止した稀なケースが複数あるからだ。1982年6月24日にインドネシア上空1万mの成層圏を飛行中の英国航空BA9ジャンボジェット機は夜間飛行中に奇妙な光に包まれた。セントエルモの火である。

 


 4発のジェットエンジンはその後停止してしまう。速度が落ちれば揚力を失い高度が徐々に低下して行った。乗員15名と乗客248名の命は洋上に不時着すれば無事では済まない。現代の航空機には巨大なターボファンエンジンが主翼にぶら下がっていて、洋上着陸ではこの部分が水にふれると機体が回転し胴体が折れてバラバラになるからである。南アメリカの海岸に不時着したジェット旅客機は着水時に水平であったにもかかわらず、機体が分解し死傷者が多数でた。

 


 ターボジェットエンジンは停止しても回転が止まる訳ではない。慣性で一定の速度は保って回転状態であるので、再起動できれば回転数と出力を戻すことができる。再起動を試み続けた結果、全エンジンが停止して12分後に高度が3,400mまで下がった時に3のエンジンが再起動に成功し、無事にジャカルタ空港に戻ることができた。

 


 では一体何故ジェットエンジンが停止したのだろうか。エンジン停止の原因は、火山灰を吸い込んだことだった。ジャカルタ南東160kmにあるカグングン山が噴火しその火山灰が成層圏にまで達していたのだ。ジェットエンジンを停止に追い込んだ火山灰はレーダーに映らない微粒子でタービン羽根について重くなった羽根が回らなくなった(注)が、低空で密度の高い空気をいっぱいに吸い込んだ際に剥がれ落ちたと考えられる。不幸中の幸いであったが、再起動の努力を継続した機長の判断が正しかった。

 このような火山噴火の影響は最近ではセントヘレナやアイスランド火山の噴火が有名である。アイスランド火山の噴火は規模が大きく流れ出したマグマは一度は300m3/日であったという。ドローンヘリに載せたGoProの映像が下記にある。

 ところで火山灰に突っ込むとみえた謎の光は何だったのだろう。それは昔から悪天候時に船員がマスト先端にみたセントエルモの火だったのだ。ピトー管など突起物の先端に静電気によるコロナ放電でセントエルモの日がみえることがあある。