宇宙ビジネスの光と影

Nov. 11, 2014

 


 オービタルサイエンシズコーポレーションはバージニア州が拠点の宇宙ビジネスの代表的な企業で、アンタレスロケットに積み込まれた無人のシグナス補給船ごと、打ち上げ開始から数秒でロケットエンジンの燃焼異常で推力が落ち、爆発し発射台に墜落したのは、NASAと商業補給サービスでISSへ8回の荷物運搬業務を19億ドルで契約中の出来事であった。

 アンタレスロケットの1段目液体燃料エンジンは複雑な事情を抱える。第1段エンジンは旧ソ連が月面着陸を目的として開発したエンジンを計画中止後に安く購入し、米国機器と整合するように改造を施したもので、すでに地上テストで爆発を起こした札付きであった。

 


  アンタレスロケットの爆発の後にロケットエンジンの同様な爆発事故が起きスペースシップ2という滑空型擬似宇宙飛行船がカリフォルニア州モハーベ砂漠に墜落し、1名が死亡、1名が負傷した。バージンギャラクテイック社は翼長の長いグライダーのような双胴4発ジェット機ホワイトナイト2にぶら下げて、成層圏で切り離し100kmの成層圏と宇宙の境界まで6名の旅客を運ぶ。擬似的宇宙飛行を提供するために、バージングループ会長のリチャードブランソンが、機体メーカーのスケールドコンポジットのバートルータン(注)と組んでこれまでの宇宙飛行より100倍安全と豪語していた。

(注)1986年に無給油、無着陸で地球一周を成し遂げたボエジャーの設計者で、特殊な飛行機設計の奇才として知られる。



 彼らには資金面でマイクロソフト創業者の一人、ポールアレンが援助し豊富な資金で若いエンジニアをモハーベ砂漠の拠点に集め、IT企業のような自由な環境で開発を進めて来た。これまでにホワイトナイツ1とスペースシップ1の組み合わせに次いでホワイトナイツ2とスペースシップ2での飛行もクリアしていた。2013年4月にはロケットを使って高度17kmに達した。一方でロケットエンジンは新たにスケールドコンポジットが開発したが、その地上テスト中に爆発事故で死傷者を出し、エンジニアのバートは8カ月間落ち込んで仕事ができなかったと語っている。どちらの事故のケースでもエンジンに危険性があった。

 

 


 民間の宇宙飛行を提供する企業として、以下のような多くの企業がある。
・スペースX
・ロッキードマーテイン
・ボーイング社宇宙部門
・アルマジロエアロスペース 
・ビゲローエアロスペース 
・ブルーオリジン 
・オービタルサイエンシズコーポレーション 
・スペースアドベンチャー 
・シェラネバダ 

 


 今回の連続事故は宇宙ビジネスでは転用によるコスト削減で様々な会社の製品が使われるために、信頼性に問題がある恐れがあることを示している。宇宙ビジネスには光と影があることを認識しておく必要があるだろう。アンタレスを打ち上げたスペースX社は事故後にCEOのイーロンマスクが事業のリスクを痛感したという。下の写真はシグナス補給船。