ISSで米国と協調するロシアの意図

Feb. 26, 2015

 

 ロシアの予算打ち切りで2010年に運用打ち切りとされていたISS国際宇宙ステーションが2024年まで延長にロシアが合意した。ロシアの宇宙ステーション建設は独立して進めるとみられているが、延長の合意にはウクライナ問題での制裁と原油価格の下落で財政へのダメージが大きいことによることは確かだ。


 

宇宙ステーション先進国のロシア

 しかしロシアは宇宙ステーションでは歴史が長い。ISSより以前に自国の宇宙ステーションを持っていた。サリュートとミールである。後者は1986年から2001年まで運営されたが、1991年のソ連崩壊で維持が難しくなっていた。一方、ISS建設は1999年から始った。


 

 欧州と米国がソ連に対抗して計画した宇宙ステーション計画が難航し、冷戦終結とともに米国とロシアの協力関係のもとでISSが誕生した。ISSへの物資補給にはスペースシャトルの他、ロシアの無人補給機プログレスが使われたこともありロシアの影響力が大きかった。4年間のロシア参加でISS自身の運営の延長となったのもそのためである。ロシアは2014年5月には制裁措置への報復として延長運用を拒否していた。


 ミールは2001年に廃棄され地球に突入したが計7個のモジュールがプロトンロケットで運ばれ、軌道上で組み立てられてステーション内の事故を経験するが、世界に先駆けてロシアと東欧の飛行士に宇宙空間での長期滞在の貴重な経験をもたらした。


ロシアの事情

 ロシアが独自に宇宙ステーション計画を再開するのは2017年とされているが、財政危機の影響が深刻化しているので、ISS延長を決めた現在、その計画に遅れがでる可能性がある。ロシアが独自に宇宙ステーションを持つ理由として打ち上げリスクの少ない軌道を選べることとしている。さらにロシアに有利な軌道への打ち上げにはソ連崩壊により(カザフスタンからの)借地となったバイコヌール基地を返納できるメリットも見据えてのことである。


 

 またウクライナ問題で米英との緊張が高まる現在、宇宙利用に独自の基地となる宇宙ステーションを持つことが自国の政治的優位に必要と判断したのだろう。2011年から中国は独自に実験用宇宙ステーション天宮を打ち上げて運用している。2018年からミールクラスの本格的な宇宙ステーションが予定されているが、ロシア、中国の独自宇宙ステーションは人類の宇宙開発にどのような寄与するのかわからないが、自国の利益に終わらないことを願いたい。