現金廃止を加速する欧州

16.02.2016

Photo: djmastercourse

 

 ECB15日に500ユーロ紙幣の廃止を非公式に決定した。世界の中央銀行間でマイナス金利が導入されているなか、同時に現金廃止の動きが加速している。500ユーロ紙幣の廃止は経済犯罪抑制(テロリストや麻薬組織のマネー・ロンダリング対策)のためであり現金使用の廃止ではないとECBは強調した。だが、欧州圏で最も使用されている50ユーロ札、ユーロ通貨流通高の40%に続き、500ユーロ紙幣は約30%を占めることから、事実上使用可能な現金の30%が無くなることになる。

 

 

現金決済の上限制限

 2010年頃から、現金廃止・決済電子化に向けて、現金決済の上限制度が世界各国で進められてきた。フランスでは、1,000ユーロ、スペインでは2,500ユーロ、ウルグアイでは5,000ドル、イタリアでは1,000ユーロ、ドイツでは5,000ユーロ、ブルガリアでは全ての不動産売買などと現金決済の規制が置かれている。中国人民銀行は、1月に独自の仮想通貨の発行を検討していることを発表している。

 

 現金廃止の動きは、特にイングランド銀行を中心とする中央銀行、シティ銀行やJPモルガンと言った「大きすぎて、潰せない」銀行、IMF などが次の金融危機の対応策として進めてきた。今多くの国でマイナス金利が導入されているなか、現金廃止の動きが加速している。マイナス金利の時こそ現金を廃止するべきだと説いている。

 

 それは、現金を廃止して、電子決済にすれば口座間の取引だけになり、全ての国民が銀行口座を意志とは関係なく、お金を口座に入れておかなければならない。銀行にとって、取り付け騒ぎのリスクはなくなり、流動性を確保できる。また、金利や手数料の形で口座から徴収することができる。つまり、マイナス金利が確実に実行でき、国民はその負担から逃れる手段はなくなるのである。

 

 

 円の通貨流通高は2015年には98.4兆円で、約85%を占めるのが1万円札である。米国では、通貨流通高の100ドル札が78%、スイスでは1,000フラン札が60%占めている。日本で1万円札、米国で100ドル札、スイスで1,000フラン札を廃止すれば、一気にキャッシュレス化が進むことになる。そうなればマイナス金利というベイルインで銀行救済が実行されることになる。